政治

2024.10.08 13:30

国民が求める「真の政治改革」:田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

1. 常にその選挙区で50%以上の得票をした候補者が選ばれるため「死票」が大きく減少し、有権者の民意が、より正確に反映されるようになる。

2. 「決選投票方式」であるため、選挙に緊張感が生まれ、選挙への関心が高まり、投票率が上がり、国民の政治参加が進む。

3. 「決選投票」に向けて、3位、4位の下位候補者の票が2位の候補者に流れる可能性があるため、相対1位の候補者も、落選する可能性がある。すなわち、与党が相対1位の選挙区でも、第2回投票で「野党連合的投票行動」が生まれやすくなるため、与党に緊張感が生まれる。

4. また、ばらばらの野党が、第1回投票ではそれぞれ独自候補を立てても、第2回投票では自然に合従連衡を行うことになるため、ある意味で「野党連合」が促進される。すなわち、第1回投票が、野党にとっての「予備選」になるため、事前の候補者調整が不要になり、野党の連携が進みやすくなる。

5. 従って、与党が国民の厳しい批判を浴びたときには、「政権交代」が起こりやすくなるため、国民の政治への関心が高まり、政治参加が大きく進む。

もとより、この「2回投票制」は、短期的に見れば、現在の与党にとっては好ましくない制度改革である。しかし、国民と有権者にとっては、明らかに好ましい改革であり、中期的には、現在の与党にとっても、緊張感を持って自己改革を続ける政党へと脱皮することができる、好ましい改革である。

新たな与党のリーダーが、真に「政治改革」を標榜するのであれば、まず、自党の利害得失を超え、政治に緊張感が生まれ、国民の政治参加が促される、この選挙制度改革をこそ行うべきであろう。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。元内閣官房参与。全国8500名の経営者が集う田坂塾塾長。著書は『人類の未来を語る』『教養を磨く』など100冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp

文=田坂広志

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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