「近年、アートに注目が集まるようになっているきっかけのひとつは、パンデミックだと思います。それまでは経済利益を追求し、約束された未来に対して一直線に向かっていけばよかったが、パンデミックにより予想していなかった隔離や社会変動が起こった。
皆、想像しえない未来が起こることを突きつけられたと思います。また企業はこれまで様々な課題に対してプロダクトやサービスで課題解決を行ってきたと思いますが、いまは課題そのものが見えづらくなっている、あるいは激しく変動する時代です。こうした不確実性の高い時代こそ、アートシンキング、アートの力が必要なのです。なぜなら、アートは社会変容を促すものですし、『本質的な問い』の部分に、クリティカルに向き合うきっかけとなるからです」
近年、欧州においても「アートがこれからの創造性、持続性にとても重要である」ことをEuropean Commissionが認知し、アートによって触発される社会を推進していることに触れた。
そして「アートの効能として「課題を即座に解決するものではないが、可能性を見出すことができる」、「0→1を生み出せる」、「異なる視点に気づかせる、既成概念を打ち破る」などを挙げ、「アートは未来の変容を触発する」「アートをつくる=未来の仕組みをつくる」と強調した。
続けて、今回のテーマ「問いを立てる」については次のように話した。
「問いを立てる、その前提として『これからの時代を生きる心構えをする』ことが求められます。未来を読み解く力を身に着け、未来に対してどう創造的に自分のコンパス(視点)を信じて行動するか。加えて、科学的根拠やエビデンス、対話、リーダーシップも重要です。
社会の一人ひとりが問いを立てられるようになるためには、教育の分野にプログラムとして落とし込む、企業で働く人々の一人ひとりがマインドセットとして身に着けておくことが必要だと考えます」