組織人としてではなく「個」としての視点を持つ
後半は、筧氏、田中れな氏、深井氏が加わり、自身の取り組む領域や活動内容を紹介。そして全員がそれぞれの立場から、ビジネスはアートとどう向き合うべきか、組織人が問いを立てるためのヒントについて話し合った。田中和子氏は、「企業・組織が成長、進化していくために、どうアートと向き合うべきか」を問いかけ、ゲストらは次のように述べた。
筧氏「僕はコンピューターヒューマンインタラクション領域において、人とコンピューターの共進化・互いが変化し続けることを研究しています。その観点でお話しますと、もっと社会はアートを取り入れ、変化することを受け入れ、楽しむべきではないでしょうか。
例えば、アート活動に携わる人のことを『アーティスト』とひと括りにしますが、そうではない方も、つまり誰もがアーティスティックな局面を持っていると思っています。その点を一人ひとりがもっと自覚して、動的に変わっていってよいと思います。変化するというのは、価値のあることなのです」
小川氏「僕は常に変わりたい、新しいものに出会いたいと考えている人間です。アートは、その変化や新しいモノを実現させてくれる触媒。職場や組織はそれを実現するためにあると考えています」
田中れな氏「組織人としてではなく、ひとりの個として考える、向き合うことが求められていると思います。アートシンキングを進める上では、組織を『世界を変えるための手段』として捉えるとよいのかもしれません」
そして、「どうしたら、一人ひとりが問いを立てられるようになるか」というテーマに対しては次のような意見が挙がった。
深井氏「問いは、いきなり立てるのは難しいと思います。まずは視点を変える、アーティストのような視点を持つことから始めてみてはどうでしょうか。視点を変えることは、練習すれば身につきます。そして異なる視点を持てれば、きっと問いが立てられるようになるでしょう」
筧氏・小川氏は、問いを立て、アートを社会やビジネスに取り入れる上では、健全な衝突、失敗や実験が行いやすい場を醸成していく必要性を説いた。
筧氏「異質なもの同士が出会う場でイノベーションが起こるが、その過程で衝突は起こるもの。それは健全なカタチで行われるべきでしょう。アートという営みを取り入れる上で大事なことです」
小川氏「『アルスエレクトロニカ』の取り組みでも、町を変容させる際にはミスやエラーをしてもいい土壌をつくること、その文化を常に耕しつづけ、啓蒙していくことを大きな役割として担っています。失敗や実験をどんどん行える、試行錯誤できるマインドセットを会社や組織、戦略に組み込むことがカギだと考えます」