欧州

2024.09.25 10:00

ウクライナ侵攻がもたらす結末は? 繰り返されるソ連の歴史から考える

戦争の代償

米国の国内総生産(GDP)は約27兆ドル(約3884兆8000億円)に上り、経済は高度に多様化している。中国のGDPは18兆ドル(約2593兆3700億円)だ。一方、ロシアの経済規模は2兆3000億ドル(約331兆4400億円)とかなり小さく、石油と天然ガスの輸出に大きく依存している。その収入の多くは国民のためではなく、戦争資金に使われている。ロシア国民の不安は水面下でくすぶり続けている。

ソ連が崩壊した時、世界はロシアとその衛星国を国際社会に迎え入れた。国際市場はロシアにも開かれた。ところが、プーチン大統領が主導するウクライナ侵攻がそれを無にしてしまった。さらに悪いことに、政権はこの国の民主化の歩みを逆行させている。大統領や政府を批判すれば、投獄されるか殺されるのが現在のロシアだ。

米国出身でポーランドに住む歴史学者のアン・アプルボームは、プーチン大統領はソ連の領土と誇りを回復した人物として名を残したいと望んでいるが、実際は国を破壊した人物としてロシア人の記憶に残るだろうと述べている。アプルボームは著書『Autocracy Inc.』(未邦訳)の中で、プーチン大統領は一般市民の利益を無視していると指摘したほか、米政府系「ラジオ自由欧州(RFE)」でも、同大統領にとって一般市民は「砲弾の餌食にすぎない」のだと語った。ソビエト時代のアフガニスタン侵攻と同じことが、今はウクライナで繰り返されているのだ。プーチン政権はバルト三国に目をつけ、ポーランドを永遠の敵と見なしている。したがって、ウクライナがこの戦争に勝利することは極めて重要なのだ。

アプルボームは次のように記している。「ロシアは過去に何度も繰り返してきたように、戦争で損失を被ることによって国家の見直しが促され、大きな変革に向けた真のきっかけが生まれるかもしれない」「過去何十年にもわたって自国のみならず近隣諸国の経済や社会を何度も悪化させ、破滅させてきた植民地主義的な政治思想の意味と目的を問うよう、ロシア人自身を説得できるのは失敗だけだ」

では、この戦争はどのような結末を迎えるのだろうか? ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの重要なエネルギー資産を破壊しながら同国の領土を奪取する戦術にも表れているように、緊張緩和のためには緊張を高める必要があると考えている。一方のプーチン大統領は、消耗戦に勝てると信じている。しかし、その代償として、消耗戦が長引けば長引くほどロシアは貧しくなり、弱体化していくだろう。そうなれば、国民は力を得て、独裁者を引きずり下ろすかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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