3. 評価戦略
評価戦略は、誘惑の強い状況に対する解釈の仕方を変えるものだ。たとえば「私は自分の時間を大切にするタイプだ」とか、「仕事を終わらせることに集中すれば、終わらせられなかったストレスを感じることなく、達成感と解放感を得られるだろう」と考えることで、自分の置かれた状況を捉え直せる。このようなアイデンティティーに基づく思考は「長い目で見れば、テレビを見るよりも他の活動に取り組んだ方が価値がある」と判断するのに役立ち、短期的な誘惑に抵抗しやすくなる。
評価戦略には、自分の行動が将来もたらす利益を思い描く「エピソード的未来思考」も含まれる。健全な選択をしたという誇りや、悪い選択を避けたときの安堵感など、後で自分がどう感じるかをイメージすると、長期的な目標を維持することがより魅力的に感じられるようになる。
このように捉え方を変えれば、セルフコントロールの力が高まるだけでなく、自分はウェルビーイングを優先する人間だというアイデンティティーが強化される。
評価戦略が十分でない場合、多くの人は意志の力に頼ろうとする。これは、気が乗らないときでも無理やり運動するなど、自分の行動を努力で抑制することだ。
しかし、前出の2024年の研究は「意志の力は当てにならず、困難で、不快なものだ。意志の力は、セルフコントロールを制御するための『最後の手段』とみなすべきだ」と示唆している。
もちろん、テレビをつけたい衝動に抗いながら、意志の力を振り絞ってデスクに向かい続けることもできる。しかし、これでは疲弊してしまい、セルフコントロールを長期的に維持する持続可能な方法とはいえない。代わりに、上に挙げた3つの戦略を定期的に実践すれば、より自然で、負担の少ないセルフコントロールが可能になる。
覚えておいてほしいのは、セルフコントロールができないからといって、弱い人間というわけではないということだ。衝動と戦うのは人間的な経験であって、個人的な失敗ではない。
セルフコントロールとは、決して何かを失うことではない。自分にふさわしい人生を創造するために、自ら選択する自由を行使し、前進を阻むパターンから自身を解放することなのだ。
(forbes.com 原文)