2. 注意戦略
注意戦略では、注意の焦点を「短期的な誘惑」から「長期的な目標」へと移す。健康の維持や経済的な安定など、より深い欲求に注意を向けることで、その場の快楽に引かれる気持ちが自然と弱まる。たとえば、自己成長にも力を入れたいが、仕事が終われば、テレビの前でくつろぎたい気持ちに駆られる。その時間を、読書や打ち込んでいるプロジェクトに費やしたいと思っているにもかかわらず、だ。
こうした場合に役立つ注意戦略は、リビングに読書コーナーを設け、テレビより視覚に訴えるようにすることだ。リビングに入るとすぐに居心地の良い椅子と本の山に注意が引き寄せられ、自身の長期的な目標が思い起こされる。このように注意の焦点を変えれば、テレビを見るという短期的な楽しみに流れるのではなく、自身の価値観に沿った活動を選択できるようになる。
学術誌Journal of Research in Personalityに2022年に発表された研究において、「自律(ego alignment)」がセルフコントロールとウェルビーイングの向上に関連することが明らかになっている。ここでいう自律とは、ある状況において、衝動のままに「やりたいこと」をやるのではなく「やるべきこと」に従う能力のことだ。
論文の共同執筆者でノースダコタ州立大学の心理学者であるマイケル・ロビンソンは、以下のように述べている。「自律性が高い人は、より内部矛盾の少ない、より良い人生を送っている可能性が高い。誰もが自分の中に、効果的に自己を導く根源を備えている。人は行動する前に、その状況において効果を発揮する可能性の高い行動と、問題となる可能性の高い行動の両方について考えるべきだ」
つまり注意戦略とは、誘惑から気をそらすだけでなく、どんな人生を築こうとしているのかを積極的に思い起こさせ、そのビジョンに役立つ行動を取りやすくするものだ。