アジア

2024.09.05 09:00

水産資源と他国の主権を脅かす「中国の違法漁業」

米国の非営利報道団体「アウトロー・オーシャン・プロジェクト(OOP:Outlaw Ocean Project)」による最近のリポートでは、約250隻にのぼる中国所有の船舶が、他国の国旗を掲げていたことが判明した(筆者のもとには、他国の高官たちから、他の事例を示唆する情報ももたらされている)。OOPのリポートによれば、これらの船舶は、アルゼンチン、ガーナ、ケニア、モロッコ、ロシア、イランなど、世界中の国旗を掲げている。うち少なくとも50隻が、違法漁業や違法な輸送など、国際的な犯罪に関与しているという。

IUU漁業とその関連活動がもたらす脅威に対抗するため、各国は、国際犯罪組織やその他の違法漁業に関わる組織のビジネスモデルを攻撃しなければならない。陸上に存在する問題の根源を攻撃する上では、法の戦略的活用、すなわち「法律戦」が不可欠となる。

IUU漁業に関わる組織は、米国や他国の裁判所で起訴可能な、さまざまな国際犯罪に関与している。また、IUU漁業を支援し、そこから利益を得ている組織を標的にすることは、軍隊が船舶に乗り込んで捜査し、さらには裁判の証拠保全のため船舶を押収する方法に比べて、はるかにコストがかからず、危険も少ない。

さらに各国は、IUU漁業の根底にある食料不足問題に対処するため、代替タンパク源を導入したり、菜食への転換を促したりしなければならない。

中国の軍事的戦略に対しては、透明性を要求し、中国の有害かつ違法な取り組みを明らかにするべきだ。また、他国が自らの海洋権益を理解して行使し、ルールに基づく国際秩序を維持できるよう、支援を結集するべきだ。外交、法律、および法執行による解決がかなわなければ、主権者の権利を守り、漁業資源を保護するために、米国とパートナー国、同盟国の軍事力による関与が必要になるかもしれない。

米国としては、「国連国際組織犯罪防止条約」や「国連海洋法条約」などの執行強化を推進しなければならない。そして一般市民は、自分たちの権利を学び、法律違反を認識して報告する訓練を受けることで、社会全体でこの問題と戦うアプローチに貢献することができる。

IUU漁業は、自然保護の観点からだけでは解決できない。この問題を総合的に見れば、社会全体でのアプローチが必要であることがわかる。法律や法執行を用いた手段、そして、社会的手段のすべてをこの問題に投入しない限り、うまみのある後ろ暗いビジネスが横行し続けることは確実だ。漁業資源と主権の両方を守るためには、個々人が国家と協力して問題に取り組まなければならない。

forbes.com 原文

翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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