ヘルスケア

2024.08.21 11:30

南米で感染広がる「ナマケモノ熱」で初の死者 知っておくべきこと

南アメリカ北部の熱帯雨林に生息するノドジロミユビナマケモノ(Shutterstock.com)

南米で、「ナマケモノ熱(sloth fever)」の通称をもつ感染症「オロプーシェ熱」の集団感染が広がっている。オロプーシェウイルス(Oropouche virus)を病原体とする病気で、知名度はあまり高くないが、初の死者がブラジルで報告され、妊娠中の感染による死産や先天異常の可能性も指摘されていることから、専門家らは懸念を強めている。

オロプーシェ熱は主に、ウイルスを保有したヌカカ(ハエ目の微小昆虫)に吸血されることで感染する。また、一部の蚊がウイルスを媒介することもわかっている。

オプローシェウイルスは、1955年にカリブ海の島国トリニダード・トバゴのオロプーシェ川で初めて発見された。その後、中南米やカリブ海諸国を中心にヒト感染が確認されており、ブラジルやペルーなどで散発的な流行が報告されていた。

米疾病対策センター(CDC)によると、感染者の約6割が発症し、潜伏期間は3~10日が一般的。主な症状は、発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、吐き気、めまい、悪寒、光過敏症などで、たいてい1週間以内に改善する。ほとんどの人は数日~1カ月で回復するが、寛解後、数日~数週間後に症状が再発することも多い。

また、まれに髄膜炎や脳炎、出血といった重篤な症状を呈する患者もいる(感染者の5%未満)。ただし、死亡例はこれまで報告されていなかった。

オロプーシェ熱の治療薬や、感染を予防するワクチンはなく、開発も進んでいない。専門家によれば、感染対策として最善の方法は、虫除けスプレーや網戸を活用して発生地域で虫に刺されないようにすることだという。

オロプーシェ熱の初期症状の多くは、デング熱、チクングニア熱、ジカ熱、マラリアの症状によく似ており、しばしば混同されて正しく診断されないことがあるとCDCは指摘している。

「ナマケモノ熱」の通称、由来は?

オロプーシェ熱やその病原ウイルスは「ナマケモノ熱」「ナマケモノウイルス」と呼ばれることがあるが、これはナマケモノの生息地でウイルスが見つかりやすいためだ。ナマケモノとの接触によって感染が引き起こされるわけではない。

研究者らは、ノドジロミユビナマケモノやサルの仲間、一部の鳥類がウイルスの宿主となっているとみており、こうした動物を吸血したヌカカや蚊が感染を媒介していると考えている。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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