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2024.08.14 10:30

ロボットに「人工的な好奇心」を与えて革命を起こす米スタートアップ

(写真上中央)Skild AIを設立したディーパク・パタクとアビナヴ・グプタ(C)Skild AI

工場で作業をする2足歩行のヒューマノイドであれ、市街地で戦闘をする4本足の軍用ロボット犬であれ、ロボットには頭脳が必要だ。従来、これらの頭脳は高度に専門化され、特定の目的に向けて作られてきた。しかし、ピッツバーグに本拠を置くスタートアップのSkild AI(スキルドAI)は、基本的な機能を実現するために様々なロボットに接続できる汎用的なインテリジェンスを開発した。

カーネギーメロン大学の元教授であるアビナヴ・グプタとディーパク・パタクが2023年5月に設立した同社は、様々なロボットに組み込むことができ、急な斜面を登ったり、行く手を阻むものを乗り越えたり、物を識別して拾い上げたりすることを可能にする「汎用脳」の基礎モデルを構築した。

スキルドAIは米国時間7月9日、ライトスピード・ベンチャーズやソフトバンク、Coatue、ジェフ・ベゾスらが主導し、CRV、フェリシス・ベンチャーズ、メンロー・ベンチャーズ、アマゾン、ジェネラル・カタリストなどが参加したシリーズAラウンドで、3億ドル(約485億円)を調達したと発表した。同社の評価額は15億ドル(約2420億円)とされた。

ライトスピードのパートナーであるラヴィラジ・ジェインは、昨年4月に初めて同社のテストを見て非常に感銘を受けたという。「ロボットは、階段を登ることができた。非常に複雑なタスクにも関わらず、それができたのは本当にすごいことだ」と彼は話す。ライトスピードは、スキルドAIが2023年7月に実施したシードラウンドも主導していた。

驚くべきことに、スキルドAIのモデルを搭載したロボットは、「創発能力」、つまり、教えられていない新たな能力も発揮した。これらの能力は、手から滑り落ちた物体を回収したり、物体を回転させるといった単純なものであることが多いが、モデルが予期せぬタスクをこなす能力を証明するものであり、大規模言語モデルのような高度なAIシステムにおいて見られる傾向がある。

スキルドAIは、テキストや画像、動画の膨大なデータベースを使ってモデルをトレーニングすることでこれを実現した。同社によると、このデータベースの規模はライバルが使用するものより1000倍も大きく、メタのAI研究者だった創業者メンバーが長年の研究で開発・テストしたデータ収集テクニックを組み合わせて構築したという。

1つの方法は、請負業者を雇ってロボットを遠隔操作させ、その動作に関するデータを収集するというものだ。もう1つは、ロボットにランダムなタスクを実行させ、その結果を記録して試行錯誤しながら学習させる方法だ。また、一般公開されている数百万本の動画も学習に使われた。

「人工的好奇心」による革命

カリフォルニア大学バークレー校の博士課程に在籍していたパタクは、システムが行動の結果を予測できないときに生じる結果に対して報酬を与えることで、「人工的好奇心」を植え付ける方法を開発した。「自分の行動が及ぼす影響の予測が不確実であるほど、エージェントの探索への好奇心が高まる」とパタクは言う。この技術によって、AIはより多くのシナリオをナビゲートし、より多くのデータを収集するようになったという。
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編集=上田裕資

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