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2024.07.27 10:00

上海の「世界AI大会」で見えた、人型ロボにかける中国の期待

AI Robot at 2024 WAIC in Shanghai(Photo by Costfoto/NurPhoto via Getty Images)

「中国はグローバルにおける人工知能(AI)開発の主導権を握るために、世界最先端のチップを必要としない」と、ファーウェイ・クラウドCEOの張平安(ジャン・ピンアン)は、7月4日から上海で開催された『2024世界AI大会(World AI Conference)』で語った。

会場で展示されたさまざまなテクノロジーからは、中国のAI産業における主要プレーヤーたちが、半導体不足の問題から人々の注意を逸らし、ヒューマノイドロボットに向けさせようとしていることが感じられた。

張によると、先進的な半導体の入手こそが、AIの主導権を握るための道だという前提に立つことは、事実上の敗北を意味するという。「最先端の半導体がないとAI開発をリードできないという考えは、捨てなければならない」と彼は語った。

米国からの輸入を禁止された最先端の半導体は、深圳の華強北電子市場のような場所で見つかるが、それらは稀で高価だ。半導体不足の解決策の代わりに、このカンファレンスでは、国産のロボットに焦点が当てられた。現地メディアの一つは、「ロボットは大規模言語モデルよりも有望か?」という見出しで、イベントを報じていた。

中国のGPUメーカーであるMoore Threads(摩爾線程)の幹部は、その記事の中で、非言語的な情報の重要性を考えると、大規模言語モデルだけでは不十分で、ヒューマノイドロボットのような多様な感覚と能力を持つシステムが求められると述べていた。彼は、大規模言語モデルに依存しないロボットの頭脳を作ることが「予想外の知能を持つ存在」を生み出すかもしれないと主張した。

今回のカンファレンスでは、FourierやTlibot、Dataa Robotics、Ti5 Robotなどの中国メーカーの18台のヒューマノイドロボットが展示された。

また、テスラも数少ない米国企業の1社として、同社が開発するヒューマノイドロボット、オプティマスの第2世モデルを持ち込んでいた(ただし、このロボットはガラス越しに展示され、参加者と対話しなかった)。4月にテスラCEOのイーロン・マスクは、投資家に対し、オプティマスは2025年からテスラの工場で稼働する予定だと述べていた。

テスラは中国で特別な扱いを受けているが、その背後には近年、同社と中国政府との間で発展した共生関係があると見られている。

中国政府の思惑

しかし、中国の当局がマスクに対して信頼を示しているように見える一方で、中国の最終目標は国内産業の育成であり、ヒューマノイドロボットはその大きな計画の一部だ。同国の工業情報化部(MIIT)は昨年、ヒューマノイドの開発に関する指針を発表し、製造業への応用の重要性を強調した。

中国の指導者たちは、先端テクノロジーの国内の産業基盤への導入に向けて大きな投資を行っている。彼らはAIを活用する上で、製造業が最も有効で即効性を発揮できる分野だと考えている。AIを使って動画を生成することは楽しいが、そのことは中国の長期的な経済発展には貢献せず、国内外の政治的安定性をもたらすこともないと彼らは考えている。

さらに、生成AIコンテンツの監視には、大きな検閲の負担を伴う。それに対し、ロボット工場の労働者はイデオロギー的な監視を必要としない。しかし、AIの知能が、企業が期待するレベルに達した場合は、いずれ監視が必要になるのかもしれない。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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