2024.07.30 12:00

専用が必要?「EVのタイヤ」について知っておくべきこと(前編)

──4輪駆動のEVは、後輪駆動のEVよりも、タイヤの摩耗は激しいのだろうか?

「他のすべての条件が同じであり(例えば、後輪駆動だからといってドリフトやバーンナウトをさせたりしない、など)、一定の走行距離ごと(5000km以下が理想的)にタイヤのローテーションを行っているのであれば、最終的に両者のタイヤの摩耗はほぼ同等になるはずです。

後輪駆動車の場合、前輪よりも後輪のタイヤのほうが顕著に摩耗します。そこでタイヤをローテーションすると、それまで後輪側に装着されていたタイヤが前輪側で少し休み、前輪側に装着されていたタイヤは後輪側に移って激しく働くことになります。

4輪駆動車の場合、タイヤの摩耗はより均等に分散されますが、ご存知のとおり多くの4輪駆動車は、通常は前輪または後輪で主に走行しており、状況に応じてもう一方の車軸の駆動力が呼び出される仕組みになっています。そのため、完全にタイヤの摩耗が均等であるクルマというものはありません。2輪駆動車でも4輪駆動車でも、タイヤの寿命を最大化し、摩耗を均等に保つために、定期的なタイヤのローテーションは不可欠です」

──タイヤメーカーはEV向けに特別なタイヤ(例えばサイドウォールを強化したタイヤやベルトや層の数を増やしたタイヤなど)を製造しているのだろうか?

「この質問に対する答えは多面的です。最初から『EV用タイヤ』を意図して設計されたタイヤはあります。例えば、多くの純正装着タイヤはそう謳っていますし、アフターマーケット製品にもそういうタイヤはあります。

そのようなタイヤは、純正装着タイヤなら自動車メーカーの要求に合わせてチューニングされていますし、アフターマーケット製品の場合は、特定のEV向けに開発されていることもありますが、しかし一般的にそのようなタイヤはEV全般向けとして意図されており、タイヤメーカーが考える最も多くのドライバーが満足するように性能をバランスさせたものになっています。他にもEV向けに特化したタイヤはありますが、技術レベルはさまざまです。

一部のタイヤメーカーには、単に既存の製品ラインのコンパウンドを転がり抵抗が低いものに変更したりするだけでEVタイヤと謳っているものがあることも判明しています。また、既存の製品ラインのインナーライナー(チューブに代って空気漏れを防ぐためにタイヤ内部に貼り付けてあるゴムの層)にノイズキャンセリングフォーム(騒音を低減するためのスポンジなど)を貼り付けただけでEV用タイヤとして販売されている列もあります。あるいは、文字どおり何も変更せずに、サイドウォールに『EVタイヤ』としてのブランド名を書き入れただけという例さえあります。もちろん、それらの中間にあたるさまざまな段階の製品が、いたるところに存在します。

そしてもちろん、すべてのタイヤの設計にはトレードオフが伴うものであるということも指摘しておかなければなりません。多くの場合、静粛性の高いトレッドパターンと低転がり抵抗には、濡れた路面や雪道におけるグリップが低下するというトレードオフがありますが、耐摩耗性は高くなります。我々のテストによると、最も効率の高いタイヤ(いわゆるエコタイヤ)は一般的に、少なくとも1つのトラクション(タイヤと路面の間における粘着摩擦)関連の指標では弱いことが実証されています」

後編に続く(7月31日公開予定)

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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