さらにギミックは、「身近だが、実は知られていない開業医の姿」を患者や他の開業医たちにも伝えるべく、2023年度から初の試みをしている。なかでも力を入れているのが「開業医白書」だ。全国の350人を超える開業医にインターネットによるアンケート調査、および対面によるヒアリング調査を実施し、昨年末に初めて公開した。
この調査で浮き彫りとなったことのひとつは、開業医の労働環境課題だ。「勤務医に比べ、時間に余裕がある」と思われがちな開業医だが、開業医の25%が10時間以上の労働を行っている。特筆すべきは40代以下の開業医で、3人に1人が10時間以上の労働をしているという。
さらに深刻なのは休日の取得で、開業医の77.8%が週休2日未満と回答している。開業医の休暇取得は、一般の企業と比べて大きく劣っている実態が浮き彫りとなったのだ。これは休診日であっても、地域医師会の要請で休日や夜間の診療を持ち回りで受け持つケースが多いためだ。
開業医の深刻な勤務状況は、なにも労働時間だけではない。開業医の間で昨今、大きな問題となっているのが「ペイシェント(患者)・ハラスメント」だ。文字通り、患者による医師や医療スタッフへのハラスメント行為だ。
開業医白書では、この「ペイシェント・ハラスメント」についても調査を行っている。その結果を見ると、開業医の28.8%が「患者とのコミュニケーションに課題を感じている」と回答。大したことのない数字にも見えるが、中身を詳細に分析すると極端な傾向が明らかになる。
実は、従業員4人以下の小規模なクリニックの医師の40%が「悩んでいる」と回答していたのだ。一方で、従業員数「5~9人」は26.6%、「10人以上」と19.0%となっている。医師が患者と接する機会の多い小規模なクリニックほど、患者との関係に悩む傾向が顕著となっているのだ。年代別で分析すると「40代以下」は30.2%、「50代」は21.1%、「60代以上」は33.0%。若い、もしくは高齢の医師ほど患者とのコミュニケーションの取り方に悩んでいるようだ。
医師の年齢とクリニックの規模を合わせて集計すると「医師:40代未満・規模4人以下」で66.7%が「悩んでいる」と回答していることになる。つまり「若くて、患者と接する機会の多い小規模なクリニックの医師」ほど、患者との関係に悩んでいる実態が浮き彫りとなったのだ。