ヘルスケア

2024.07.23 11:30

致死率高いニパウイルス、インドでまたも集団感染 10代少年が死亡

ニパウイルスの自然界の宿主はオオコウモリだ。ニパは麻疹(はしか)や流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などを引き起こすウイルスと同じグループに属する。オオコウモリはニパに感染しても目立った病気にはならないようだが、ニパはヒトやブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌなど広範な宿主にうつることが知られている。また、過去の集団感染では、少なくともヒトとブタで重篤な症状がみられたことが記録されている。
オオコウモリがニパウイルスの自然界の宿主(Getty Images)

オオコウモリがニパウイルスの自然界の宿主(Getty Images)


さまざまな宿主にうつり得るという点が、公衆衛生の専門家による感染経路の追跡や、感染拡大の抑制をいっそう難しくしている。2001年以降、主にバングラデシュとインドで集団感染が報告されており、マレーシアやフィリピン、シンガポールでも発生している。WHOによると、1998〜2015年に約600の感染例が報告されている。

ヒト、動物に対して使用が許可されているニパの治療薬やワクチンはない。感染者への処置は対症療法に限られている。米疾病予防管理センター(CDC)によると、モノクローナル抗体を用いた免疫療法が初期段階の臨床試験に入っている。すでに他の病気の治療でヒトに使われている抗ウイルス薬のレムデシビルは、動物実験でニパウイルスへの曝露(ばくろ)後に投与した場合も有効性が示されたという。ニパの近縁種であるヘンドラウイルスのワクチンは、オーストラリアではウマ用として流通しており、ニパウイルス感染に対してもある程度の予防効果があるようだ。

ニパウイルス感染の治療法やワクチンの開発は積極的に進められている。感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)は今月初め、ニパウイルス感染を予防するモノクローナル抗体の臨床試験を来年早々に開始する計画を発表した。モノクローナル抗体は、ウイルスと結合することでウイルスが細胞に感染するのを阻止する。英オックスフォード大学のパンデミック科学研究所は1月に、初のニパワクチンとなる可能性を秘めたワクチン候補の臨床試験を開始した。このワクチン候補は、同研究所が製薬大手アストラゼネカと共同開発した新型コロナのワクチンと同じウイルスベースの遺伝物資伝達の技術を使用している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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