ソニーが試作したのは太さ1mm以下の血管や神経など身体の微小な組織を、顕微鏡など併用しながら処置する「マイクロサージャリー」という微小外科手術分野を支援するロボットだ。
開発に携わるソニーの宮本敦史氏、見上慧氏、大脇浩史氏を訪ねて、ロボットの試作機に触れる機会も得た。
精密な手の動きをミニチュア化するロボット技術
ソニーの手術支援ロボットは医師などオペレーターが遠隔操作を行う「リーダー部」と、患者の臓器に接しながら処置を行う「フォロワー部」によるセパレート構成になっている。それぞれの筐体にはソニーのロボティクスに関わる多方面の技術が投入されている。一般には「ソニーと医療」の組み合わせがあまり馴染まないかもしれない。宮本氏によると、ソニーは2015年ごろから独自の力覚センサーを搭載する精密操作ロボットの試作を開始しており、当時から医療分野での応用を想定した研究開発も行ってきたという。
2021年にはソニーグループの研究開発組織が「精密バイラテラル制御システム」という遠隔操作ロボットの技術を発表した。このロボットは人による手先の操作を10分の1スケールの世界に反映することができる。
例えば人がロボットを操作しながら手先を10ミリ動かすと「ロボットの手先」は1ミリ動く。ロボットが1gf(グラム重)の力で環境に接触すると、10gfの力が操作者に返ってくる。さらに例えるならば、操作者の身体が10分の1のサイズになって、ミニチュアの世界の中で作業をするようなイメージだという。