失くしていいものと、いけないもの
多くの人は完璧を求めますが、それは時に進歩の妨げになると同氏は説明します。宇宙でクルーが生き残れるかどうかは、現実的なアプローチで課題を克服できるかどうかにかかっているからです。「私たちはさまざまな状況を想定して訓練を行っていますが、時には未知の領域に遭遇することも、クルーだけでどうすべきかを決めなければならないこともあります。私の最後のミッションでもそのようなことが起こりました。重要なのは、チームとして対処することです」。
予期せぬ難題に直面した場合は、全体的な優先順位を見極めることが重要だと同氏。「100%の解決策はありません。宇宙では、このことが究極の目標であるチームの生存につながります。
地上にいる私たちは、予期せぬ変化が起きた時にはそれに合わせて計画を変更しなければならないことを再認識すべきです。強力なチームワークがあってこそ、すべてのメンバーが、より大きな究極の目標に向けて状況を立て直すことができるでしょう。つまり、全員の目標のベクトルを一直線にするのです」。
安全を守るコラボレーション
同氏は最後に、宇宙産業に携わる全員のコラボレーションの重要性を訴えました。当時のソビエト連邦がスプートニクを地球低軌道に打ち上げることに成功してから、約70年。以来、国家機関や企業は何千もの衛星を打ち上げてきました。
新しい機体を比較的簡単に軌道に投入できるようになったことは、大きな可能性と同時にリスクももたらしています。連携がうまくいかなければ、宇宙を旅するすべての人の安全が損なわれるだろうと同氏は警告します。
「宇宙産業は急速に変化しており、私たちの仕事で若い世代に夢を持ってもらえているように思います。ただ、大切なことは、地上と同じように、宇宙もサステナブルである必要があるということです。地上では気候に関する課題があります。一方、宇宙では、新規の小型衛星が多く打ち上げられているため、スペースデブリが他の機体の軌道に与える影響が懸念され始めています。
今が、世界経済フォーラムが世界に向けて警告を発する良い機会かもしれません。衝突の管理と軽減を考える必要があるのです」。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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