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2024.07.08 08:00

レバノン出身の24歳が設立した「核融合スタートアップ」の野望

JCバタイチェ(C)X @FuseEnergyTech

JCバタイチェ(C)X @FuseEnergyTech

現在24歳のレバノン出身の起業家、JCバタイチェは、核融合エネルギーを使ってすべてのエネルギー問題を解決するという大胆な目標を掲げている。彼の会社は、投資家から2000万ドル(約32億円)を調達し、イランの原子力機構で核融合プロジェクトを指揮した核科学者やペンタゴンの元高官らとともに開発を進めている。

1950年代に最初の水爆実験が行われて以来、科学者たちは、実用的な核融合エネルギー源を開発するために苦闘してきた。核融合は、無限のエネルギーを生み出し、化石燃料に代わるクリーンで持続可能なエネルギー源を提供することが可能だ。

核融合エネルギーの実用化は、少なくとも10年、あるいは20年先のことだと考えられている。しかし、バタイチェが設立したスタートアップのFuse(フューズ)はまず、このテクノロジーを使用した放射線のテスト施設を設置し、政府との契約からの収益を長期的な開発資金に充てようとしている。このビジネスモデルはシリコンバレーの投資家のBuckley Ventures(バクリー・ベンチャーズ)や、連続起業家のスカイ・デイトンらを魅了し、2000万ドル(約32億円)以上の出資を受けている。

イラン出身のトップ科学者やペンタゴンの元高官らを含むチームを率いるバタイチェは、2016年に母国のレバノンを離れ、北米に移住した。「私たちの会社は、スペースXがNASAの宇宙計画に果たしたような役割を米国の国家核安全保障局(NNSA)との取り組みで果たしたいのです」とフォーブスに語った。

投資家は、バタイチェの計画を支持している。フューズは現在、シリーズAラウンドで2000万ドル(約32億円)の追加出資を募っている。同社は、エネルギー省傘下のサンディア国立研究所やロスアラモス国立研究所と契約を結び、今年は200万ドル(約3億2000万円)の収益を見込んでいると投資家向け資料に記載している。

「バタイチェは最高の創業者としての資質を持っている。私は彼が、何度も壁を突き破っていくのを見てきた」と、自身の投資会社を通じてフューズに投資したジョシュ・バクリーはフォーブスに語った。

バタイチェは、絶好のタイミングで会社を立ち上げた。バイデン政権は、今月初めに核融合エネルギーの開発の促進に1億8000万ドル(約290億円)を支出し、複数の核融合エネルギー企業と政府とのパートナーシップに4600万ドル(約73億円)を追加配分すると発表した。

ゲイツやアルトマンも興味を示す

政府と提携するこの分野の企業の中には、MITからスピンアウトしたCommonwealth Fusion Systems(コモンウェルス・フュージョン・システムズ)があり、ジョージ・ソロスやビル・ゲイツなどの投資家から20億ドル(約3213億円)以上を調達している。もう一つは、シアトルに拠点を置くZap Energy(ザップ・エナジー)で、同社もゲイツやエネルギー大手のシェルやシェブロンから2億ドル(約321億円)以上を調達している。

さらに、OpenAIのサム・アルトマンもこの分野に興味を示し、2028年までに実用的な核融合発電所の展開を目指すHelion(ヘリオン)に個人で3億7500万ドル(約602億円)を投資している。同社は昨年、マイクロソフトとエネルギー契約を結んだ。

イラン出身の核科学者

核融合分野では、すでに激しい競争が繰り広げられているが、フューズの支援者らは、放射線のテスト事業と並行してテクノロジーをスケールアップさせるというバタイチェのアイデアに強気だ。同社の主任技術者のヴァヒド・ダミデは、かつてイランの原子力機構で国家の核融合プロジェクトを監督していた核科学者だ。彼は、米国が核攻撃に備えるためのツールの、Titan(タイタン)とFaeton(フェアトン)の開発を進めている。
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編集=上田裕資

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