こうした懸念をばかげていると思う人は、トランプの政策ウィッシュリストに注意を払っていないのではないか。
ヘリテージ財団が共和党のために作成したマニフェスト「プロジェクト2025」を見るだけでいい。この政策集には、米連邦準備制度理事会(FRB)の廃止、金(ゴールド)を裏づけとする通貨体制への復帰、金融詐欺の取り締まりの実質的な取りやめといった政策が並んでいる(編集注:ただ、トランプは最近、プロジェクト2025と距離を置く姿勢を見せている)。
トランプはアルゼンチン流に、ドルを切り下げて貿易で優位に立つと吹聴している。1期目にしたように、日本や韓国など米軍が駐留しているアジアの同盟国を揺さぶる取り組みは、2期目でも主要な優先事項のひとつになるに違いない。
米最高裁判所は7月1日、トランプや将来の大統領は「公的行為」としては何をやっても免責されるとしたに等しい判断を示した。トランプがこれまで以上に国内外で向こう見ずなことをやるのに、司法がお墨付きを与えたようなものだ。
日本の岸田文雄首相にとって、バイデンがしでかした大ヘマは、悪夢のような年をますます悪化させる材料だ。2024年が始まった時点では、日本銀行は23年にわたる量的緩和体制を終わらせるのは確実とみられていた。
ところが今年、アジア第2の規模をもつ日本経済は収縮し、円相場は急落し、中国経済も減速している。経済成長に弾みをつけるような賃上げが広がる見込みも薄い。岸田自身も、9月に控える自由民主党総裁選で出馬断念に追い込まれるか争って敗れるかして、退陣する可能性が現実にある。
経済問題に自民党議員の裏金問題も重なり、岸田の支持率は20%台まで下がっている。自民党内では、トランプの返り咲きが現実味を増すなか、大きな警鐘が鳴り響いていることだろう。