もっとも、トランプ再選の可能性が一気に高まったことに、アジアの主要国の指導者全員が悲嘆しているわけではない。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、トランプとの首脳会談をさらに数回重ねたいと熱望しているだろう。訪米してホワイトハウスでやりたいとも望んでいるかもしれない。
中国の習近平国家主席は貿易戦争こそ喜ばないかもしれないが、ほかの点ではトランプ2.0を歓迎するだろう。米国が親密な同盟国を遠ざけたり、混乱と機能不全に陥ったりするのは、中国がまさに望んでいることだからだ。
そうした混乱や機能不全は、トランプが選挙で負けても起こり得る。トランプが潔く敗北を認める可能性はゼロであり、前回の選挙後、2021年1月6日に起こったような暴動が再び発生するのはほぼ確実だ。格付け大手フィッチ・レーティングスは昨年、米国の格付けを最上位の「トリプルA」から1段階引き下げた際、この暴動の背景でもある米政治の分極化を理由のひとつに挙げている。
アジア諸国の通貨当局者やバンカーらは、3兆ドルが危機に瀕するなか、シートベルトをしっかり締め、最善を祈るくらいのことしかできないかもしれない。
(forbes.com 原文)