今回のセレクションにおいてミシュランが大切にする価値基準、そしてミシュランキーがもたらす変革とは。ミシュランガイド インターナショナルディレクターのグウェンダル・プレネック氏に聞いた。
──ミシュランでは、3つ星レストランの定義を「そのために旅行する価値のある卓越した料理を提供する店」とし、日本では宿泊施設の掲載はありませんでしたが、フランスでは昔から宿泊施設の掲載がありました。日本でもこのセレクションが生まれたというのは、とても時代に合ったものだと思います。
そうですね。実はフランスでは、ずっと宿泊施設の掲載はしていました。ただ、食のために旅をする人たちから、「ミシュランが美食家のためにおすすめする宿はないか」と聞かれることが多く、ただ宿泊施設を載せるのではなく、私たちの視点から評価をして、より目的に合った選びやすさを提供する必要があると考えました。
──宿泊施設とレストランの審査員は別なのですか?
ホテルセレクションに関わっているのは、全30カ国のインスペクターです。国籍や住む場所を問わず、一つのチームとして動いています。そして、宿泊施設とレストランのインスペクターも一つのチームで、その人の経験値によっては、両方のインスペクターを兼ねる場合もあります。
ただ、良いレストランがあるから良い宿泊施設というわけではなく、宿泊施設の評価は独立して行われています。もちろん、良い宿泊施設には良いレストランがある場合が多いですが。
──また、ユニークなのは、今回のセレクションが独自の予約システムと連携し、ミシュランのサイトでそのまま予約できる、ということですね。
ミシュランキーの構想が実現したのは、2019年に予約サイト会社「タブレットホテル」を買収したところからです。この年から、日本を含めた世界の調査を開始すると同時に、予約システムを構築してきました。ウェブ上でワンストップサービスで提供できるのが特徴です。
──予約サイトとの連携で、公平性が損なわれることはありませんか?
それはありません。確かに予約の際の手数料はとりますが、国ごとに一律となっていますし、例えば高い金額を払ったから良い評価を得るなどということはあり得ません。また、予約サイトのチームと審査員のチームは完全に分かれています。ミシュランガイドは、もともと無料で配布を始めた冊子ですから、そこでお金を稼ぐDNAはありません。