食&酒

2024.07.18 14:15

恐るべき「偽造ワイン」の世界。ヤフオクの多くは偽物、被害総額120億円の偽造犯も

偽造ワインを見分けるポイントについても聞いた。
日本で流通している偽造ワインのほとんどが、本物のワインの空き瓶を入手し、そこに偽物のワインを入れ、偽物のコルクとキャップシールで封をする方法だという。つまり、瓶とラベル(表・裏)は本物で、中身のワイン、コルク、キャップシールは偽物だ。ワインを開けて確認することはできないので、キャップシールからの情報が重要となる。

・キャップシール

フランスワインの場合、手がかりとなるのが、女性の横顔の絵が書かれた緑色のシール。これはCRD(通称マリアンヌ)といい、フランス国内で酒税を支払った証だ。ここに地区番号と生産者番号が記載されており、この番号が合っていない場合は偽物の可能性が高い。

キャップシールのデザインも重要だ。偽物の場合、デザインや穴の位置などが微妙に異なっている場合は要注意。例えばDRCの場合、何年かに一度キャップシールのデザインが微妙に変わるため、年ごとのキャップシールの違いを把握していることも、鑑定の手助けとなる。

・コルク

コルクに印字されたドメーヌ名やヴィンテージのフォント、原産地呼称などの情報も真贋を見極める重要な手がかりとなる。キャップシールに少しでも違和感がある場合や、偽造ワインが多いアンリ・ジャイエの場合、必ずキャップシールを切り、ライトを当ててコルクの焼き印と状態(熟成期間相応の状態かどうか)をチェックするという。

キャップシールを切ってコルクを確認したアンリ・ジャイエのワイン。

キャップシールを切ってコルクを確認したアンリ・ジャイエのワイン。

また、古いワインの場合、リコルクされていることもある。生産者自らリコルクした場合、コルクやラベルにその証明となる記述がある。もしワイン商など第三者がリコルクした場合、中身の真贋の見極めが難しくなるため、生産者がリコルクしたものしか基本的には扱わないという。

・ラベル

日本の場合、瓶とラベルは本物のパターンが多いのだが、例えばラベルが偽物だった場合、やはりフォントや紙質に違和感があるという。ラベルに疑いがある場合、顕微鏡で文字を拡大して活版印刷であるかどうかを確認することもある。偽物はドット印刷がなされているケースが多い。また、ヴィンテージが書かれている肩ラベルも、偽物の場合は形がいびつなことが多いという。

・ワインの澱

ワインを開けずとも、液体の見た目から判断できることは色々ある。そのために投光器を当てて液体の色をチェックし、ヴィンテージものの場合、相応の澱があるかどうかを確認する。偽造ワインの場合、古いヴィンテージであっても澱がないケースも多い。ルディの手法のように、コーヒーやエスプレッソのカスを澱に見せかけて混入していることもあるが、その場合、澱が粗いのですぐ判別できるという。

いいワインの澱は絶妙に美しく重合している。

いいワインの澱は絶妙に美しく重合している。

また、生産者の醸造スタイルやヴィンテージによっても澱の状態を予測できるという。例えば、アンリ・ジャイエは無濾過のため澱が出やすいが、ヴィンテージによって澱の出方も異なる。87年、92年のようにあまり良くないとされるヴィンテージは澱が少なく、90年など良年の場合は、澱が多いという。DRCの場合は、ヴィンテージによって清澄作業をしている年もあるため、年による醸造方法の違いを把握していれば、真贋鑑定の助けとなる。このような話からも、鑑定のプロは、広範な知識が要求されるということがよくわかる。
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