食&酒

2024.07.18 14:15

恐るべき「偽造ワイン」の世界。ヤフオクの多くは偽物、被害総額120億円の偽造犯も

ヤフオク!の多くは偽物

これらの偽造ワインが厄介なのは、流通している偽造ワインが、その市場でしか流通していない点だ。つまり日本に出回っている偽造ボトルのパターンを把握していなければ、きちんと鑑定するのは難しいため、各国に少なくとも1人は鑑定のプロが必要になる。

特に偽造されやすいのが、幻のワインであるアンリ・ジャイエはもちろん、DRC(特にロマネコンティとラターシュ)、シャトー・ペトリュス、シャトー・ラフィットといった高級ワインだ。アジアでは中国マーケットで偽造ワインが特に多く出回っており、中国から日本に来たラフィットの大半は偽物だという。また、レアワインだけでなく、2019年にイタリアの「ティニャネロ」の1万本以上の偽造ワインが発覚したように、比較的本数が多いものも偽造されることがある。

中国で絶大な人気を誇るシャトー・ラフィット・ロートシルト

中国で絶大な人気を誇るシャトー・ラフィット・ロートシルト

中国系の偽造集団の場合、活動の主戦場となる販売手段はヤフオク!だ。匿名配送ができるため、ヤフオク!を利用するために必要なヤフオクID(ちなみにIDも売買されている)も使い捨てのものを使えば、足がつきにくいためだ。さらに翌日落札など期限を短く設定し、速やかに取引を終わらせるケースが多いという。

筆者もサイトをチェックしてみたのだが、高額ワインだけでなく、偽物ワインの元となりうるDRCの空き瓶が即決349,980円で売られていた。堀氏の場合、真贋鑑定の研究のため、あえて偽造ワインと思われるボトルを落札し、本物と並べて微妙な差異を研究することもあるというから頭が下がる。

状態チェックと偽造ワインの見分け方

それではオークションに出品されたワインを、実際どのように検品するのか。堀氏にレクチャーして頂いた。

まずは出品依頼があると、その方のご自宅へ赴き、必ずワインの保存環境を確認&入手経路などをヒアリングするという。

ワインの品質に最も大切なのは、「プロヴェナンス(来歴)」だ。正規品として日本に輸入されたものなのか、第三国を経由したものなのか……そこが品質判断の鍵となる。そのため納品書など購入の証明になるものがあれば確認し、裏ラベルからも判断する。

さらに預かったワインは、1本1本、出品に値するかどうかの検品が行われる。「偽造ワイン以上に多いのが、状態のよくないワインですね」と堀氏。基準となるのは、「自分が飲みたいと思うかどうか」。「落札される方は美味しいことを期待していらっしゃるので、自分が飲みたいと思わなければ、お受けするべきではないと思っています」。

そのためにも投光器でボトルの底から光を当て、ワインが濁っていないか、色落ちしていないかなど細かくチェックする。たとえば、熟成のピークを過ぎて劣化の可能性が高いものは、良生産者の貴重なバックヴィンテージでも返品することもあるという。

液面の高さや液漏れの有無も重要とされるものの、実はそこまで気にしなくていいケースもある。例えば小さい造り手が多いブルゴーニュの場合、目減りしていても、ワインの色が問題なければ過敏になる必要はない。瓶詰量が生産者によって異なることも多く、もともと先の細いブルゴーニュボトルの形状から目減りが目立ちやすいためだ。

また、ワインは熱で膨張するため、液漏れやコルクが上がるケースもあるが、例えばドメーヌ・ルロワなどは、口径が細いコルクを使っているのに加え、ワインを目いっぱいにまで詰めるため、ワインの品質に影響がない程度の温度変化でも液漏れしやすく、あまり気にする必要はないという。

アプリには各ロットの詳細データやボトルの表裏の画像が掲載されているほか、気になるものは下見会で実物をチェックできる。

アプリには各ロットの詳細データやボトルの表裏の画像が掲載されているほか、気になるものは下見会で実物をチェックできる。

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