豪華客船で日本の伝統工芸品を販売 飛鳥IIが「宝船」になるとき

飛鳥IIでは、地域経済のハブとして大きな力をもつ全国の地方銀行が関わる企画も多い。飛鳥がターゲットとする富裕層は、地銀の顧客と重なり親和性が高い。地銀にとっても飛鳥が寄港することによる高い経済効果や、地元の優れたものを飛鳥IIを通して紹介できるメリットもある。ASPは地銀との連携を深め、現在の取引先は全国に95ある地銀のうち70行にも及ぶ。2025年に就航予定の新造客船「飛鳥III」の建造費用は、ASPのアレンジで約30の地銀が参画。400部屋のうち、スイートルーム47部屋を各都道府県の金融機関にプロデュースしてもらう「ASUKA×47」プロジェクトも進行中だ。
作品の陳列方法は、日本工芸会と相談して決める。各部屋には作品集が置かれている。

作品の陳列方法は、日本工芸会と相談して決める。各部屋には作品集が置かれている。

「飛鳥は地域創生を具体化していくきっかけであり、日本文化を知ってもらうきっかけ。そこから先は当事者同士でつながってくれたらいい。飛鳥をきっかけに、幸せになる人を増やし社会の役に立てたら」現在飛鳥IIは、世界一周クルーズの真っ只中だ。

6月には寄港先のニューヨークで、停泊中の船内にニューヨーカーを招いたイベントを開催予定。人間国宝も参加する鼎談を船内で実施し、通訳や解説はメトロポリタン美術館の学芸員が務めるという。

「作品展示だけでなく、船内のレストランで日本料理のおもてなしもできるし、劇場では歌舞伎の上演もできる。日本文化をこれだけひとつに凝縮できる場所はほかにありません。世界中どこへでも行けるという強みを活用して、多くの方々と一緒に飛鳥を動く日本パビリオン』にしていきたい」


篠田哲郎◎1992年日本興業銀行に入行、97年より海運業界を担当。2007年初の船舶投資ファンドを設立。共同創業者を継ぎ19年よりアンカー・シップ・パートナーズ代表取締役社長。郵船クルーズ取締役等兼務。

アンカー・シップ・パートナーズ◎国内最大の船舶投資ファンド運営会社。金融や海運に関する高度な知見とノウハウを武器に、投資ファンドの枠組みにとどまらず、顧客と共に地域創生や文化応援なども手がける。

文=堤 美佳子、松﨑美和子 写真=アーウィン・ウォン

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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