空間コンピュータである以上、PCから脈々と続く「ディスプレイの中」という、プログラムやコンテンツを表示させる枠を取り除くことに成功している。画面のサイズや場所にとらわれず、自由にアプリやコンテンツを配置できるのだ。これは素直に感動できるポイントと言える。
また、米国の著名YouTubeチャンネル「MKBHD」のマルケス・ブラウンリーが、アップルのティム・クックCEOにインタビューで、Vision Proが登場する前に両親を亡くしていることを明かした。
しかし過去の写真をvisionOS 2の空間フォトへの変換によって、3D化できるようになり、情緒的な価値として非常に大きなインパクトを与えるとの考えを示している。
そして3つ目の価値が、顧客価値だ。しかしここは、正直なところ、まだ判断することは難しいだろう。
iPhoneが登場した当初、インスタグラムやUberといったサービスやアプリが存在していなかったように、我々の生活を決定的に変化させるVision Pro用のアプリは、まだこの世に生まれていない可能性が高い。
だからこそ、アップルは空間コンピュータのためのアプリ開発を後押ししようとしているのだ。
空間コンピュータのアプリ開発とは?
本記事にコメントを寄せたアップルのスーザン・プレスコット氏が名前を挙げていた日本のデベロッパーに「MESON(メザン)」がある。CEOの小林佑樹氏は、日本でのVision Proの発売は「思ったより早かった、喜ばしいニュース」と評価し、Vision Proのアプリ開発について、次のように語った。
「Vision Proのアプリは、これまでと異なり、ディスプレイ以外の場所、空間に配置することが想定されます。
例えばデスクの上、壁などにアプリや情報を置きっぱなしし、ひと目見るだけでそれが確認できたり、視界の隅で変化に気づいたりというまったく新しい体験を作り出すことができるようになります。
いままでであれば、情報を見たければアプリを開かなければなりませんし、そのアプリはディスプレイという平面に押し込めなければなりませんでした。Vision Proアプリは平面だけでなく、立体としても、作ることができます」
小林氏は、この感覚をわかりやすく「アプリのインテリア化」と表現した。そして予想以上に重要な要素となるのが、音だったという。
「Vision Proアプリにおける音のアウェアネスはかなり重要だと考えます。空間オーディオの技術を活用し、アプリが配置された場所から音が聞こえてきます。
不快な通知音を発し続けるアプリは、閉じられてしまうでしょう。自分の空間に置きたくないアプリ、身近において過ごしたいと思われるアプリが、生き残っていくのではないでしょうか」