経営・戦略

2024.06.18 09:30

プライバシーを差別化要因にするアップルの「生成AI戦略」

アップルの「差別化」の根拠

アップルがAI開発競争に参入したことで、シリコンバレーではデータ・プライバシーを巡る議論が再燃している。アップルは、グーグルやメタ、アマゾンといった主要なライバル企業とは異なり、ユーザーデータの収集にあまり関心を持っていない。その理由は、同社がiPadやiPhone、MacBookといったハードウェアから多くの利益を得ていることにある。そのお陰で、アップルはプライバシー重視による差別化を図る余裕があるのだ。

アップルは、AIを展開するに当たっても、プライバシー保護に対する高い評価を活かそうとしている。ユーザーデータを品質管理やメンテナンスに利用することは一般的に行われているが、同社はそれもしないと約束している。アップルがプライバシー保護によって、クラウドを使い、データを収集しているライバル企業と差別化を図ろうとしているのは明らかだ。

マイクロソフトやChatGPTを開発したOpenAI(マイクロソフトから数十億ドル規模の出資を受けている)、メタ、アドビ、グーグルといった業界リーダーを含む競合他社の多くは、ユーザーデータの利用やAI機能を巡ってデジタル著作権管理団体や消費者から批判を受けている。

「誰かのAIクラウドで保管し、分析されるために自分の人生に関する詳細なデータを引き渡す必要はない」と、アップルでソフトウェア・エンジニアリングの責任者を務めるクレイグ・フェデリギはWWDCで述べ、他社との大きな違いを強調した。

イーロン・マスクの主張

イーロン・マスクは、アップルがApple Intelligence構想のためにOpenAIと提携することを決めたことに激怒し、アップルのデバイスを自身が経営する会社のキャンパスから締め出すと発言した。彼はアップルのAIツールを「不気味なスパイウェア」と呼び、OpenAIとの提携は「容認できないセキュリティ違反」だと主張している。

マスクは、後にX(旧ツイッター)のクラウドソーシングによるファクトチェックによって訂正された投稿の中で、「OpenAIがユーザーデータを保護することをアップルが保証できると考えるのは明らかに馬鹿げている。アップルは、データを引き渡した後に何が起きているのか全く把握していない」と述べた。

マスクとOpenAIには、確執の歴史がある。彼は同社を共同設立した後、利益相反の疑いを理由に退社しており、共同創業者のサム・アルトマンとは対立している。さらに、マスクはOpenAIの主要な競争相手となり得るxAI(エックスAI)を設立し、ChatGPTのライバル製品であるチャットボットのGrok(グロック)を開発している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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