宇宙

2024.06.19 18:00

英ストーンヘンジと「月」の不思議な関係、夏至に18.6年に一度の稀な現象

世界遺産、ストーンヘンジの背後に沈む月(Getty Images)

世界遺産、ストーンヘンジの背後に沈む月(Getty Images)

今週、世界で最も有名な巨石建造物である英国のストーンヘンジで、珍しい天体現象が観測される。その模様は、グリニッジ標準時6月21日金曜日21時30分(日本時間6月22日6時30分)からYouTubeでライブ中継される。

ストーンヘンジでは、夏至(今年は現地時間6月20日)の日に、その中にあるヒールストーンと呼ばれる岩と中心にあるその祭壇石を結ぶ直線上に太陽が昇ることはよく知られているが、今年は珍しい「major lunar standstill」(月の大停滞)により、月が最も南の地点から昇る。

18.6年に一度起きる現象

「月の大停滞」は18.6年に一度起きる現象だ。この稀な事象は、地球と月の傾きが最大になった時に起こり、月の出と月の入りは、地平線上の最北あるいは最南の位置になる(訳注:その前後に月の出入りの位置の変化が止まるように見えることから「大停滞」と呼ばれる)。

ストーンヘンジと「月」の関係

英国政府が歴史的建造物を保護するために設立したEnglish Heritageによると、月の大停滞の時、ストーンヘンジの4つのステーションストーン(測量石)からなる長方形の長軸が、月の出の最南端の方向と一致する。

「ストーンヘンジが太陽とつながりがあることはよく知られていますが、月との関係はあまり理解されていません」とレスター大学天文考古学名誉教授のクライブ・ラグルスはいう。「4つのステーションストーンが月が出入りする最も端の位置に対して並んでいることについて、それが意図的なものなのか、もしそうであれば、どうやって実現したのか、目的は何だったのかを研究者たちは長年議論してきました」

地球は23.4度傾いた軸で自転しており、太陽は年間を通じて約47度の範囲内で昇り、沈む。太陽が天空を通る経路を黄道(こうどう)と呼ぶ。月の軌道は黄道に対して5.1度傾いており、月は57度の範囲内で昇り、沈む。

将来の研究のためにすべてを写真に残す

「月の大停滞」は観測が難しい天体イベントだ。たとえば、月の出の最端点(最北あるいは最南)は都合よく満月の時に起こるわけではなく、2024年から2025年にかけてあらゆる月相で起きる。月の出の位置が最北端や最南端に来るのは至点(夏至と冬至)ではなく、分点(春分と秋分)の近くだが、今週はほぼ満月に近い月が夏至に昇る。三日月が昼間に昇ることよりもずっとドラマチックな事象だ。

科学者たちは、月がステーションストーンと並ぶ瞬間を写真に撮るために、「停滞シーズン」の間、ストーンヘンジにいる。「太陽と異なり、月の端点を追跡するのは容易ではなく、特別なタイミングと気象条件が必要になります」とオックスフォード大学ケロッグカレッジのアマンダ・チャドバーン博士はいう。「それらの極端な位置での月の出入りを体験し、ステーションストーンが受ける光や影のパターンなどの視覚効果を目撃することで何かを理解するとともに、交通や樹木などによる現代的な影響についても考慮し、将来の研究のためにすべてを写真に残したいと考えています」

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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