マイクロソフトやフェイスブックといったライバル企業とは異なり、アップルは過去1年間、AIに関して大きな発表を避けてきたが、アップルが提供する新しい生成AIは、音声アシスタントSiriのアップグレード、文章作成支援ツール、電卓、画像処理ツールなど、非常によく実装されており、アップル製デバイスの買い替え需要を促進する可能性がある。では、この新たなAIはアップルの株価をどれほど押し上げるのだろうか?
生成AIがデバイスの買い替え需要を促進
現状、アップルはこの新しいAI機能をハイエンド・デバイスにのみ提供している。これは、機能の提供のためにより高性能なオンデバイスの処理能力を必要とするためと思われる。例えば、iPadとMacではM1以降のチップを搭載したデバイスでのみ動作する。iPhoneでは、A17 Proチップを搭載したiPhone 15 ProとPro Maxのみだ。参考までに、その条件に当てはまる最も安いiPad(訳注:第3世代のiPad Pro)の価格は約600ドル(訳注:日本では約9万4000円で販売されている)で、A17 Proチップを搭載したiPhone 15 Proは1000ドル(訳注:日本では15万9800円~)に跳ね上がる。アップルが今後発売する多くの新しいデバイスにAIを搭載する可能性は非常に高いと思われるが、アップルの消費者、特にiPhoneユーザーの大半は、AI機能を利用するためにはデバイスを買い替える必要があると考えていいだろう。対応するiPhoneの機種は、世に出回るiPhoneの10%をはるかに下回る可能性が高い。それを踏まえると、AI機能の登場により、近年低迷するiPhoneとiPadのビジネスが活性化される可能性は大いにある。ちなみに、iPhoneの販売台数は22年度に約7%増加したが、23年度は2.5%減少し、今年度も若干減少すると見られている。iPadは3年連続の減収となりそうだ。アップルの新型iPhoneは今秋に発売されると見られており、iPadは最近ラインナップを一新したばかりだ。