群行動する無人機
USAACについては、海軍省の研究開発予算の「将来の水陸両用作戦」という項目で簡単に触れられているだけで、詳細はほとんどわかっていない。2024年の研究目標は、「AIによる自律型指揮統制の統合と実地試験」である。USAACの特徴の一つは「群行動」だ。既存の無人車両のようにオペレーターが個別に操作するのではなく、鳥や魚の群れのように集団で協調行動を行う。車両そのものは自律型で、オペレーターは群れ全体の動きを指示するだけでいい。
軍用ドローンで一般的になってきた手法だが、現在のところ実戦で使用しているのはイスラエル国防軍(IDF)だけだ。
軍事ニュースプラットフォームのSandboxx(サンドボックス)によれば、米国のUSAAC計画は2016年に始まった。米海軍は2018年の時点で、USAACのテスト車両を13台保有していた。レジャー用の水陸両用市販車「クアッドスキー(Quadski)」を、無人機に改造したものだ。
クアッドスキーは、四輪バギーとジェットスキーを掛け合わせたレクリエーション・ビークルだ。水陸の両方で時速70kmを出せ、スイッチ一つで車輪が90度回転してバギーからジェットスキーに早変わりする。
米ミシガン州のGibbs Sports(ギブス・スポーツ)が2013~16年に製造していたが、市場を開拓できなかった。製造された1000台余りは現在もメンテナンスに対応しており、中古市場で高い需要がある。
海軍は、USAACの進捗状況について取材に応じていない。
クアッドスキーによるロボット戦争
ウクライナの戦況によって、USAACの配備が加速する可能性もある。ウクライナ軍はロボットジェットスキーを実戦投入し、無人船舶の価値を証明した。また、クアッドスキーに似た小型地上ロボットも多数配備し、自爆攻撃やマシンガンによる火力支援に使用している。群行動するロボットの前衛部隊が海岸に上陸すれば、複数の任務を果たせるだろう。部隊の上陸に先立って状況を偵察し、上陸可能かどうかを確認し、敵の位置を特定できる。また、ウクライナ軍のロボットと同様に、掩体壕(えんたいごう)などの防御設備を無力化したり、部隊が上陸する前に敵をおびき寄せて混乱させ、足止めしたりできる。
その過程で、多くのロボットが犠牲になるだろう。しかし、兵士に代わって銃弾を受けることは、消耗品であるロボットの任務の一つだ。
USAACが当時実現していたら、Dデーに上陸した兵士たちは心から感謝していたことだろう。
(forbes.com 原文)