アジア

2024.06.10 10:00

中国フードデリバリー大手「美団」、時価総額が約6兆円増 海外展開も準備中

StreetVJ / Shutterstock.com

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王興(ワン・シン)が創業し、最高経営責任者(CEO)を務める中国のフード宅配アプリ大手、美団(メイトゥアン)は、他社との競争が一服し、国外進出の動きを続ける中、今年1〜3月に予想を上回る成長を確保した。アナリストによると、同社は1月の最安値から400億ドル(約6兆2700億円)近く時価総額を増やし、年内いっぱい好調を維持する可能性があるという。

香港株式市場は今年約40%上昇し、美団株は同市場に上場するハイテク株の中で2番目にパフォーマンスの良い銘柄だ。フォーブスの推計では、45歳の王の資産は現在95億ドル(約1兆4900億円)。美団はフード宅配やホテル予約など主力のローカル商業部門の業務を合理化し、節約志向のユーザーを引きつけるために手頃さを売りとするサービスを導入した。

こうした戦略は美団が抖音(Douyin)を撃退するのに役立っていると、香港を拠点とする調査会社Blue Lotus Capital Advisors(ブルー・ロータス・キャピタル・アドバイザーズ)の創業者エリック・ウェンは話す。TikTokの中国版である抖音は、フード宅配分野への参入に熱心だった時期があった。抖音はライブストリームやビデオクリップの視聴者に、組み込まれたリンクを通じて食事の注文を促していた。だが、配達の体制を整え、美団よりも価格を安く抑えるためにクーポンや割引を提供しなければならず、コストはかなりのものになった。

「美団のファンダメンタルズは今やプラスに転じている」とウェンはいう。競争が緩やかになった以外に、香港でのフード宅配アプリKeeTaが成長しているなど、中国本土以外での展開も進んでいる。

こうしたことから、2024年第1四半期の売上高は前年同期比25%増の755億元(約1兆6330億円)と予想を上回る伸びだった。利益は約54億元(約1170億円)で、前年同期比60%増。まとまった量の食料品を安い価格で購入できる地域共同購入など、いくつかの新規事業の損失が縮小したことなどが貢献した。香港の金融サービスのCMBインターナショナルのアナリストは分析で、業績の悪い倉庫の閉鎖やユーザーに配布する割引クーポンの削減により、新規事業の損失は縮小し続けると予想している。

だが中国の景気回復はまだ不安定だ。加えて、抖音が戦略を練り直し、業界の小規模事業者を買収するなどしてフード宅配で再び攻勢をかけてくることはないという保証はない。

王が美団をより多くの市場に進出させようとしているのは、こうした理由からだ。6月6日のアナリスト向けの業績説明会で、王は欧州や中東、東南アジアへの進出を視野に入れていると述べた。

米ブルームバーグ通信は4月に、美団はKeeTaをサウジアラビアの首都リヤドで展開し、中国圏外で初の進出先とする考えだと報じた。だが王は業績説明会で慎重な言い回しでグローバル展開に言及し、計画はまだ初期段階であることを強調した。

王は「実際には、当社は多くの市場を調査中だ。中東や湾岸諸国も含まれる」と話し、「だが、正直なところ、これほど早く中東での事業について報道されたことはやや驚きだ。現地では何も立ち上げていない。いくらか準備をしているだけだ」と説明した。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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