約10センチの脚を持つ、黄色と灰色のしま模様のジョロウグモは、他の昆虫にのみ脅威を与える毒を持つことで知られ、サウスカロライナ州のクレムソン大学の調査によると、米国の南よりも北へと速く広がっている。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は昨年12月、このクモが早ければ今年の夏にニューヨークの近隣の州に現れるかもしれないと報じ、「このクモが出現するのは時間の問題だ」というジョージア大学の研究者のアンディ・デイビスの言葉を伝えていた。
これまでのところ、このクモの目撃報告の多くは米南東部のジョージア州で、次いでサウスカロライナ州とテネシー州となっている。しかし、ジョージア大学によるとここ最近は、ワシントンD.C.のすぐ北のメリーランド州でも目撃情報が寄せられているという。
このクモは人間に危害を加えることはないが、米国においては外来種であり、ハチやチョウ、スズメバチ、バッタ、ゴキブリ、カブトムシ、他のクモなどを捕食する。
ジョロウグモは、「記録された中で最も内気なクモの1つだ」と2023年のジョージア大学のレポートは述べており、このクモは無害な騒音に対して「1時間以上も固まる」という前例のない反応を示したという。
このクモは、ニューヨークのような大都市の環境にも適応可能で、ジョージア大学の研究者は、このクモが騒音やストレスに耐える性質を持ち、交通量の多い道路脇の電柱や街灯、信号機などに巣を張るケースがあることを確認している。このクモは、糸を飛ばして風の流れに乗って移動して、生息地域を広げているという。
ジョージア大学のデイビスは、このクモに噛まれると「ハチに刺されたのと同じくらい痛い」とNYTの取材に述べている。ただし、これまで約500匹のジョロウグモを扱った経験を持つ彼によると、このクモは挑発されない限り人間に危害を加えることはないという。
アジア原産のジョロウグモは、2013年頃に日本や中国、台湾、韓国からアトランタに向かうコンテナ船に乗って米国に上陸したと考えられている。ジョージア大学によると、米国南東部では、8月から10月にかけてジョロウグモを目撃しやすい時期になるという。同大学は、このクモが森林の端や小道沿いで見つけやすいと述べている。
ジョロウグモは、米国で話題となった複数の外来種の昆虫のひとつに挙げられる。2014年頃に米国に上陸した東南アジア原産のマダラランボ(Spotted lanternflies)も、生息数を増やしており、農作物を食い荒らし枯らしてしまうことから、当局は米国民に対してこの虫を踏みつぶすよう呼びかけるキャンペーンを展開している。また、外来種ではないが、セミも最近全米で発生しており、騒音に対する苦情が寄せられ、環境にさまざまな問題と利益をもたらしている。
(forbes.com 原文)