リーダーシップ

2024.06.21 15:00

これからの私たちに必要なのは、未来を見据えた「モラル・リーダーシップ」の実践だ

ジャクリーン・ノヴォグラッツ|非営利団体アキュメン創業者・最高経営責任者(Mark Shaw)

「世界はあなたを待っている」

──「モラル・イマジネーション(倫理的想像力)」を育む」という原則について説明してください。
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ノヴォグラッツ:
私たちは自分自身のレンズで世界を眺め、解決策を他者に強要しがちだ。しかし、重要なのは、他者の問題を自分の問題としてとらえ、顧客に寄り添い、その声に耳を傾け、理解することだ。これがモラル・イマジネーションである。
 
投資先のひとつ、シリコンバレー発のスタートアップ企業「d.light(ディーライト)」が好例だ。2007年創業の同社は、アフリカを中心とする国々の低所得層にソーラー電灯などを提供している。彼らは、貧しい家庭が灯油に頼っている状況を変えるべく、現地の人々の声に耳を傾け、何が必要かを見いだした。そして、顧客だった多くの人々を雇い、現在では(世界70カ国に及ぶ)1億6000万人超の生活を明るく照らしている。
 
まず、世界が相互依存関係にあることを理解し、モラル・イマジネーションで行動することがカギだ。

──書籍のなかで、「世界はより良くなっている」と書いていますね。

ノヴォグラッツ:貧困層の減少など、40年前よりはるかに良くなっている。(1986年)20代半ばの私が住んでいたルワンダでは、女性は夫の署名がないと銀行口座を開けなかった。だが、今や女性たちも国家経済の担い手としてチャンスを手にしている。また、同国では多くの若者が電動バイクに乗っている。こんな日がくるとは夢にも思わなかった。
 
一方、世界には格差が厳然として存在し、気候変動という危機にも直面している。現実を見据えながら希望を失わず、現状と闘い続けるべきだ。
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──日本の若者にメッセージを。

ノヴォグラッツ:日本を訪れたとき、社会のために良いことをしたいと望む多くの素晴らしい若者に出会ったが、始め方がわからない人もいた。既定路線を進むよう親からプレッシャーを受けている人は、始める前から確かな「答え」を探していた。
 
日本に生まれたことは特権であり、特権には責任が伴う。周りを見渡し、問題を探そう。それが「隠れたチャンス」だ。そして、解決策を考える。答えが出なくてもいい。「とにかく始める」勇気をもとう。当事者の声に耳を傾け、問題への理解を深め、変革を試みよう。失敗したとしても何かを学べる。
 
失敗する覚悟がなければ、社会起業家として成功することなどできない。失敗しても前進する勇気をもとう。「世界はあなたを待っている」。


アキュメン◎「事業・リーダー・思想の普及への投資を通じて貧困問題への取り組みを変える」というミッションを掲げ、寄付金をベースとした「忍耐強い資本(Patient Capital)」の社会的企業への投資に取り組んでいる多国籍NPO法人。具体的には東・西アフリカ諸国、パキスタン、インド、ラテンアメリカ諸国、アメリカ合衆国において、貧困問題の解決を図る革新的なビジネスに対して、投資と投資後のビジネスサポートを行っている。

ジャクリーン・ノヴォグラッツ◎非営利団体アキュメン創業者・CEO。最も困難な貧困問題を解決しようとする社会起業家に「忍耐強い資本」を投資するという考えに基づいて、2001年にアキュメンを設立。「インパクト投資」のパイオニア。その他の著作に『ブルー・セーター』(英治出版)など。

インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー

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