このようなフェスに来場する人たちは、開催国によっても微妙に異なるが、基本は日本在住のそれぞれの国の人たちが多いようだ。ストレスの多い異国で暮らし、働く彼らが、同胞と一緒に自国の文化や食をひととき楽しむ祭りのような場に集結するのは当然のことなのだろう。
とはいえ、手軽に異国の現地グルメが満喫できることもあり、日本人の姿、特に若い世代や子供連れのファミリーなども多く見かける。
異なる2種類のモンゴル料理が
こうしたフェスの会場を訪れると、多文化社会化が進行する今日の日本社会を象徴する光景がいくつも見えてくる。筆者は、GW中の5月4日と5日、ワルシャワ在住でたまたま来日していた友人(元ウクライナ在住でカメラマンの糸沢たかしさん)と練馬区の光が丘公園で開催されたモンゴルの春祭り「ハワリンバヤル2024 」を訪ねた。
会場では、モンゴル風餃子のボーズやチァナサン・マハ(塩ゆでの羊肉)、ショルログ(羊肉の串焼き)などの屋台が30店以上も出店。モンゴル相撲や舞踊、民族楽器の馬頭琴の演奏、そして遥々この日のために来日したモンゴルの人気アーティストのライブなど、さまざまなステージが披露された。
まずは筆者が日ごろから足を運んでいる都内のモンゴル料理店のブースを紹介しよう。すでに訪ねていたいくつかの店の顔なじみのスタッフやオーナーたちに再会できたのはうれしかった。
この祭りを主催しているのは、在日モンゴル留学生会というモンゴル国の留学生たちなのだが、モンゴル国出身の店である「アラル」(赤羽)や「IKH MONGOL」(田端)だけでなく、中国の内モンゴル自治区出身の店の「モリンホール」(新宿)や「スヨリト」(神楽坂)も出店していたことが興味深かった。
筆者は以前、モンゴル国を訪ねたレポートで、現地で食べた料理は、中国の内モンゴルでは見たこともないメニューも多く、中国や東京の「ガチ中華」の店で食べたものとも別物のようだったと書いたことがあるが、その違いが、このフェスの飲食ブースでも見られた。
たとえば、羊肉の串焼きの場合、内モンゴルの店だとたいてい羊肉を小さく切って串に刺しているが、モンゴル国の店では、ロシアのシャシリクのように大ぶりの羊肉と野菜を長い串に刺している。またモンゴル国の店では中国にはないロシア風の野菜サラダも出していた。
民族的なベースは同じでも食文化の微妙に異なる2種類のモンゴル料理があるということがわかる。それを日本にいながら知ることができるわけだ。