「VIVANT」のチンギス役も会場に
実はもう1人、会場にはユニークな人物がいた。昨年、モンゴル国で撮影され、日本で放映されたテレビドラマ「VIVANT」に出演し、阿部寛や堺雅人の敵役であるチンギス役を演じたバルサラハガバ・バトボルドさんだ。
おさげ髪に和装という不思議ないでたちの彼は、ドラマ撮影後、日本が好きになり、すでに20回も来日したそうだ。彼はステージに上がり、「いまモンゴルは旅行に最適の季節になりました。どうぞ訪ねてください」とスピーチしていた。
なんでも今年は「モンゴル観光年(モンゴル訪問の年)」だそうで、当地を訪ねた外国人観光客全員に一頭の羊がプレゼントされるそうだ(どうやってその羊を日本に持ち帰ればいいのか説明されないところはご愛嬌か)。
会場にはモンゴル国のバトエルデネ自然環境観光省大臣も来場し、フォトジェニックなモンゴル各地の動画を映しながらの旅行セミナーも開催された。モンゴルがいま日本人の観光客誘致に力を入れているのは、以前説明したとおり、ロシアと中国にはさまれた地政学的な環境もあるようだ。
モンゴルの政府関係者は、スピーチの折、枕詞のように「北東アジアで数少ない民主主義国であるモンゴルと日本の関係は重要」と必ず口にする。彼らは日本の経済協力もそうだが、日本人の訪問を強く願っていることがよくわかるのだ。
意外な光景も目にした。食やファッション、雑貨などに関するブースが並ぶなか、不動産を扱うブースがいくつもあった。話を聞くと、来場した在日モンゴル人を対象に、日本で稼いだお金でウランバートルやその郊外のベットタウンに建設されたマンションの購入や投資を勧めていたのだった。
モンゴル国の首都ウランバートルには高層マンションが林立する一角があることも以前書いたが、この光景を見たとき筆者は1990年代末に始まった中国での不動産建設ラッシュと投資ブームのことを思い出した。
もとより人口350万人のモンゴル国と人口14億の中国では比較にはならないものの、新興国の胎動が10数年遅れで始まっていることにあらためて気がつかされるのだった。
筆者は7月にモンゴル国に行く予定である。このフェスで見た光景は、現在のウランバートルとリアルにつながっていることだろう。じっくりいまのモンゴルの街を歩いてみたいと思っている。