食&酒

2023.08.09 13:00

いま東京で密かに注目を集める「ガチネパール料理」とは?

稲垣 伸寿

ネパール民族料理店「アーガン」のスクティチリ(Sukuti Chilli)

いまや世界の食都である東京の「ガチ中華」の世界を訪ね歩いて3年、どうやら「ガチ」なのは中華だけではないことを知った。

中国由来の料理がインドで現地化した「インド中華」の世界を案内してくれたインド・ネパール料理専門家の小林真樹さんによると、「ガチネパ」こと「ガチネパール料理」なるジャンルも都内には存在しており、インド料理ファンの間ではよく知られているという。

「ガチネパ」とは何か。前出の小林さんによれば、日本で一般的に知られるカレーやナン、タンドリーチキンといった従来のインド・ネパール料理ではなく、カトマンズなど現地で実際に食べられているネパール料理のことを指すのだそうだ。

では、「ガチネパ」はどんな場所で食べられるのか。それは日本最大のネパール人街とされる東京都新宿区の大久保だという。そこで小林さんに案内していただき、「ガチネパ」を中心としたインド・ネパール料理店巡りに出かけることになった。

これらの料理があれば「ガチネパ」

ネパール居酒屋「ムスタング タカリ」(新宿区大久保1-9-16 2F)は、2015年10月のオープン時に、ネパールの代表的な家庭料理で、豆スープとご飯と野菜の付け合わせに漬物などをセットにした「ダルバート」を500円という格安で提供(現在は600円)したことで知られる。このように安価に設定されたのは、ネパール人留学生向けのメニューとして提供されたからだという。
ネパール居酒屋「ムスタング タカリ」のダルバートはご飯と豆スープの定食

ネパール居酒屋「ムスタング タカリ」のダルバートはご飯と豆スープの定食


小林さんは「『ガチネパ』の目安としては、まずダルバートがあるかが基準になる。次いで、チョエラ、スクティ、ブトゥワ、サデコあたりの料理が揃っているかどうかでも判断できる」と話す。

「ガチネパ」とはどんな料理なのか自分の舌で知るため、代表的なガチネパ店と小林さんが推奨するネパール民族料理店「アーガン」(新宿区大久保2-32-3 リスボンビル4F)を訪ねた。
ネパール民族料理店「アーガン」のチキンチョエラ(Chicken Choila)

ネパール民族料理店「アーガン」のチキンチョエラ(Chicken Choila)


教えてもらった「ガチネパ」料理は、確かにこの店のメニューには存在した。

まずネパールの「スパイス和え料理」というカテゴリーのひとつ、「チョエラ(Choila)」。マトンや豚、チキン、鴨、水牛、大豆などのバージョンがあり、メニューに「辛口Very Hot」と書かれているように、食べると鼻の頭から汗が出るほど辛かった。

そして「干しマトン料理」の「スクティ(Sukuti)」。こちらはビーフジャーキーのように固いマトンをスパイスで野菜と炒めたものだ。これらの料理はネパール焼酎の「アイラ」によく合った。

この店で供していたネパール風餃子である「モモ」をゴマ風味の冷製スープに入れた「スープモモ(Soup Momo)」は、後述のように純粋なネパール固有の料理ではないが、「ガチネパ」の料理に入るという。
ネパール民族料理店「アーガン」のスープモモ(Soup Momo)は、チベット由来の料理がネパールで現地化

ネパール民族料理店「アーガン」のスープモモ(Soup Momo)は、チベット由来の料理がネパールで現地化

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文・写真=中村正人

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