「生成AIの使い方」と重なる、「電子計算機の使い方」
後半は本書の根幹たる部分であり、第二次世界大戦も経験した筆者が、電子計算機への誤解、計算機が支配する世界について思いを馳せながら、本当に訴えたい「電子計算機の使い方」について叙述している。この部分はまさに「生成AIの使い方」に置き換えて読みたい。電子計算機は「人間の幸せのために」「使うもの」であり、特に筆者のベル研究所における会話から思考を得た「自然科学の急速な進歩と社会科学の鈍たる進歩のギャップにより、沢山の不幸が生産される」ことは、まさに生成AIの急激な発展と、追従することが精一杯の現代社会への再度の警鐘であろう。
本書にも、情報・通信といった言葉は出てくるが、インターネットの登場、そして、OpenAIによる言語モデルのスケーリング則などは当然、考慮されていない。2012年に鬼籍に入った著者が、今、本書を書き直したら、どのような記述をするのだろうか。興味は尽きない。
曽根康司(そね・こうじ)◎ キャリアインデックス執行役員。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程EMBAプログラム修了(MBA)。時計商を経て、黎明期のインターネット業界に飛び込む。アマゾンジャパン4号社員、Yahoo! JAPAN、キャリアインデックス、EXIDEAを経て、2023年11月に再ジョイン。「焼肉探究集団ヤキニクエスト」メンバーでもあり、全国数百件の焼肉店を食べ歩いている。