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2024.06.05 14:15

「講談社ブルーバックス」、第一次AIブームの1963年『人工頭脳時代』で産声

「講談社ブルーバックス」第1冊目『人工頭脳時代』

「講談社ブルーバックス」第1冊目『人工頭脳時代』

「講談社ブルーバックス」の創刊は1963年。297円で発売された記念すべき通算1冊目は『人工頭脳時代』だ。著者は1925年東京生まれ、東京大学理学部物理学科卒(理学博士)、当時東海大学名誉客員教授の菊池誠氏(2012年逝去)であった。「序にかえて」のタイトルはいみじくも「電子計算機をどう受け入れたらよいか」だ。

この歴史的な第1冊目を、1990年代、黎明期のインターネット業界に飛び込み、アマゾンジャパンの立ち上げにも関わった経験を持つ曽根康司氏が読んだ。

60年前に菊池博士が期待し、危惧もした「電子計算機と人間」の未来とは──。


「電子計算機への期待」はどんなだった?

「電子計算機」について書かれた本であるが、「電子計算機」を「生成AI」に置き換えて読むと面白い。

本書は1963年に「科学をあなたのポケットに」を標榜し発刊された講談社ブルーバックスの第一弾である。時期としては、第一次AIブームと重なる。インターネットの起源であるARPANET(通信ネットワーク)の研究開始が1967年ごろであるから、結構な時間が経過しているが、主張に古びた感じがしないところにこの本の凄みがある。

目次を開くと10章に分かれているが、内容は大きく3つに分かれていると言える。前半の「電子計算機への期待」、中盤の「電子計算機の仕組み」、そして後半の「電子計算機の使い方」である。

前半では、トランジスタの発明により、電子回路が真空管の時代から飛躍的に発展することへの期待に加え、その思考は民族的な見地にまで及ぶ。たとえば「環境を変える民族」を「環境に順応する民族」を比較し、環境に対する考え方によってその後の文明に差異が出ることを指摘しているのだ。このことは、創造と規制を繰り返す現代の情報化社会にも大きな示唆を与えるものであろう。

中盤は入力装置や演算装置、二進法の解説といった「電子計算機の仕組み」について書かれている。挿絵に使われている大型の機械や新幹線の予約システムの図を見ると、流石に時代の流れを発展を感じるが、電子計算機に「不得意なことをやらせる」ことの無意味さに言及しているあたりは、まさに今の生成AIとの付き合い方とオーバーラップする。
電子計算機の仕組みが「ソロバン」になぞらえて説明されている(100-101P)

電子計算機の仕組みが「ソロバン」になぞらえて説明されている(100-101P)

「トランジスタの誕生」が説明されている(170-171P)

「トランジスタの誕生」が説明されている(170-171P)

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