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2024.06.04 14:15

駆除専門業者に聞いた「トコジラミ生息調査と処理作業」の実情

──実際の駆除現場でのエピソードなどがあれば。

森氏:白い防護服を着用し、作業を実施している様子が一番上の写真です。ちなみに白い防護服を着るのは、体に虫が付着しても発見しやすいようにです。

作業中、他の作業者の体表にトコジラミが這っているのを見かけ、緊張が走った経験があります。トコジラミは物や衣服にくっついて拡散することがほとんどですが、その拡散の様子を実体験しましたね。
Zdenek Macat / Getty Images

Zdenek Macat / Getty Images

また、濃厚に生息している現場なのに、依頼者は全くかゆがっていない、ということもありました。聞いてみると、もうずいぶん前から生息しているようで、「始めはかゆかったが、最近はもうかゆいということはなくなりました」とおっしゃるんです。

トコジラミのかゆみは抗原抗体反応で生じます。刺される(吸血される)ことが日常化すると、体はそれを通常の状態と受け取り、かゆくなくなる、ということを話には聞いていたのですが、抗原抗体反応を起こす人体の不思議を実感しましたね。

また、ある共同宿舎で作業した際、上下二段のベッドの上段にトコジラミが多数生息していました。

でも、それだけではなく、現場を見ると、ベッド周りにお菓子などの食べこぼしが多数散乱しており、チャバネゴキブリが大量に発生していたんです。

依頼者はゴキブリは問題視していないのに、トコジラミだけを毛嫌いしていました。「なるほど。たしかに、ゴキブリはかゆくないから……」と納得。

──トコジラミ被害にどう気づけばよいか、アドバイスはありますか?

森氏:トコジラミは被害が明らかになるまで時間を要します。一度に大量のトコジラミに吸血されない限り、「かゆみ」はすぐに発現しません。通常は、4回目の吸血あたりから「かゆく」なり始めることが多いのです(※参考:下記書籍)。
『Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎 改訂第2版』(夏秋 優著、2023年、Gakken刊)

Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎 改訂第2版』(夏秋 優著、2023年、Gakken刊)


始めは数も少なく、単なる「虫刺され」と判断し、塗り薬で対処することが多いと思います。

だが、かゆみはおさまらない。そこで、「ダニがいるのかな?」とダニの処理を行うが、それでもおさまらない。ここで初めてトコジラミを疑うんです。

でも、ここまでの間にトコジラミは繁殖し、一般の方では処理しきれない生息数になっていることが多いのが実情です。

アドバイスとしては、1. 体の露出部分にかゆみがあり(ダニの場合は、「露出していない場所」を多く刺される)、2. 赤いぶつぶつ(下記写真)様の症状がある、3. 壁や柱・調度品・布団クッション・ベッド周りに黒いぽつぽつしたシミ汚れ(血糞)がある、といった状況が見られる場合、トコジラミの生息が疑われます。早急に専門家へご相談下さい。

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