2. 刺激の偏り
メディアの消費は感覚入力(視覚や聴覚などの感覚器官を通じて脳に送られる情報)の複雑な相互作用をともなう。この作用は、子どもの脳に思いがけない仕方で影響を与えることが知られている。行動・発達小児科学の専門家であるスーザン・R・ジョンソン博士は、テレビを見ることは「感覚を何重にも奪われる」ようなものだと解説している。テレビ番組などの視聴では、視聴覚刺激を受動的に消費することになるため、脳の健全な発達に必要な、感覚の全領域での感覚体験が得られないという意味
ショッキングなことに、五感全体へのバランスのとれた刺激の不足が長期にわたり続くと、脳の大きさに影響するおそれがある。ジョンソンが紹介している研究によると、あまり触られたり、遊んだり話しかけたりしてもらっていない子どもは、十分にそうしてもらっている子どもよりも脳が20〜30%小さかったという。
また、テレビなどの番組は、激しく点滅したり蛍光色などカラフルだったりする映像、あるいは質の悪い再生音など、刺激過多な性質があるため、それにさらされると感覚器官が圧倒され、その発達や機能の乱れにつながることもある。
視覚と聴覚というたった2つの感覚しか使われず、しかもこれらの感覚が過剰な刺激にさらされるメディアコンテンツでは、子どもは神経連絡や重要な認知スキルを向上させるのに必要な適切な感覚体験を得られない。子ども向け番組は手軽に利用できる娯楽だが、発達途上の脳への影響を考えると、リスクに見合うほどの価値はないだろう。
子どもに見せないほうがいい作品、見せてもいい作品
これらの研究結果を踏まえると、最近人気の動画コンテンツには、親が子どもに見せるのをやめたほうがよい作品がいくつかある。ここでは2つだけ挙げておこう。・『ココメロン(CoComelon)』:親しみやすい歌、色鮮やかなアニメーションで子どもに人気のココメロンだが、そのテンポの速さと過剰な刺激は子どもの注意力や自制心を損なってしまうかもしれない。
・『ミズ・レイチェル(Ms Rachel)』:この大人気YouTubeチャンネルも、親は子どもに見せるかよく考えたほうがいいだろう。ミズ・レイチェルのエネルギッシュな振る舞いや、使われる鮮やかなビジュアルは、子どもにとって教育的な効果をもつ以上に過剰な刺激になるかもしれない。