スポーツ

2024.05.22 14:00

サウジ政府系ファンド、女子テニス協会と提携 世界ランキング命名権を獲得

サウジアラビアはこの5年間、スポーツ界に巨額の投資を行い、引き換えに世界的な大会への影響力と参加権を獲得してきた。PIFの運用資産は9250億ドル(約145兆円)に上るとされる。サウジのこうした動きに対しては、スポーツを利用して人権侵害の歴史を隠蔽しつつイメージ向上を図る「スポーツウォッシング」だとの批判がある。

世界経済フォーラム(WEF)が世界各国の男女格差の状況をまとめた「グローバルジェンダーギャップ報告書」2023年版で、サウジアラビアは146カ国中131位と評価され、2022年から順位を4つ下げた。2022年に施行されたいわゆる「個人身分法」では、女性が結婚や離婚をする際には男性後見人の許可を得ることを義務づける規則が成文化された。また、サウジはLGBTQの権利を認めておらず、同性愛は禁錮刑や死刑の対象とされている。2018年に女性の車運転を数十年ぶりに解禁し、2019年には児童婚を禁止するなど、近年はジェンダー平等に向けて前進しているが、それでも他国に大きく遅れをとっている。

テニス界、特に女子テニス界とサウジとの提携をめぐっては、多くの現役・元選手が反発している。1970~80年代にグランドスラム通算59回の優勝を誇るマルチナ・ナブラチロワと、その最大のライバルだったクリス・エバートは連名で、米紙ワシントン・ポストに「私たちが女子テニスの発展に貢献したのはサウジアラビアに搾取されるためではない」と題した論説を寄稿。同性愛を公表し、ガールフレンドとの写真を定期的にSNSに投稿しているダリア・カサトキナも、サウジとのパートナーシップ不支持を表明している。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のグローバルイニシアチブ担当ディレクターであるミンキー・ウォーデンは、「サウジアラビアは男性後見人制度が女性の基本的人権を否定する抑圧的な国であり、そこで女子テニスの大会を開催するという発想は、女子テニスを普及させた先駆者たちを侮辱するものだ」と述べた。

一方、1973年の全米オープンで「優勝賞金を男女同額にしない限り大会をボイコットする」と訴え、先駆的な女子テニス選手として知られるビリー・ジーン・キングは昨年夏、WTAとサウジとの提携協議に支持を表明。サウジでのWTAイベント開催は女性の権利運動の促進につながるとの見方を示した。ただ、キングは後日「私が懸念しているのは女性のことだ。私たち(女子テニス)が(サウジに)行くなら、変化を期待する。とはいえ、私はエンゲージメントとインクルージョンを重視しているので、難しい問題だ」とも語っている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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