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2024.04.26

五輪メダリストの報奨金事情 パリ大会から陸上選手に追加賞金

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陸上競技の国際統括団体である世界陸連(WA)は今月上旬、今夏のパリ五輪で金メダルを獲得した選手に賞金5万ドル(約770万円)を贈ると発表した。これまでは出場国が自国のメダリストに報奨金を出していたのみで、国際競技団体としては初の試みであり、慣例からの脱却となる。五輪選手にとっては新たな収入源となる。

マラソンや競歩、トラック競技など陸上48種目を統括する世界陸連によると、国際オリンピック委員会(IOC)から4年ごとに受け取る収益分配金から240万ドル(約3億7000万円)を選手への賞金にあて、金メダリストに5万ドルを贈る。全競技が対象で、リレー種目ではチームに賞金が贈られ、選手の人数で等分される。

国ごとの報奨金事情はさまざまだ。米NBCニュースによると、シンガポールは米国の20倍近い報奨金を金メダリストに贈っている。直近の五輪では、金メダルを獲得した個人への報奨金は73万7000ドル(約1億1000万円)だったという。

フォーブスは以前、2022年に中国・北京で開催された冬季五輪で17個の金メダルを獲得したイタリアが、金メダリストに20万1000ドル(約3000万円)のボーナスを支給し、大会終了までに支払った総額は270万ドル(約4億2000万円)に上ったと報じた。

なお、この大会で米国の金メダリストに支払われた報奨金は3万7500ドル(約580万円)。米国は25個の金メダルを獲得し、総額150万ドル(約2億3000万円)を支払った。

米五輪選手に賞金を提供しているのは米オリンピック・パラリンピック委員会だ。AP通信が報じたところによれば、銀メダリストには2万2500ドル(約350万円)、銅メダリストには1万5000ドル(約230万円)が贈られる。

世界陸連の新方針については、同じく国際的なスポーツ団体である夏季五輪国際競技連盟連合(ASOIF)が今月19日の声明で反対する姿勢を示した。賞金について事前に知らされておらず、相談も受けていないとした上で、世界陸連の賞金は「オリンピズムの価値を損なう」「下位選手を無視するもの」だと主張した。

かつて五輪はアマチュア選手のみに出場権が認められ、競技を通じて金銭報酬を得たり、スポンサーの支援を受けたりしている選手はIOCから敬遠されていた。五輪に資金を引き込む可能性があるプロ選手の出場が増えたのは、五輪憲章から「アマチュア」の定義が削除された後の1990年代からだ。

AP通信によれば、五輪のプロ化の幕開けは1992年のバルセロナ大会で圧倒的なパフォーマンスを見せつけて金メダルを獲得した米男子バスケットボールチームだとされている。このドリームチームにはマイケル・ジョーダンやマジック・ジョンソン、ラリー・バード、チャールズ・バークレー、デビッド・ロビンソンといった名選手がそろっていた。

APは世界陸連のセバスチャン・コー会長が記者団に、5万ドルの報奨金に関する発表直前にIOCにその旨を「予告」したが、それだけだったと語ったと伝えている。IOCはこれに対し、収益分配金をどのように使うかは各競技の統括団体に委ねられていると答えたという。非営利団体であるIOCは、公式ウェブサイトによると、五輪で得る全収入の90%を世界陸連などの統括団体に分配している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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