海外

2024.05.25 13:00

2兆円の巨大市場、「CO2排出量の測定ソフト」を展開する仏Greenlyの挑戦

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アルノー・デルバックと義理の兄のアレクシス・ノルマンが、彼らのスタートアップのアイデアを思いついたのは2019年に家族でバカンスに出かけたスペインの海辺の街だったという。

当時23歳だったデルバックは、フランスにあるESSECのビジネススクールで修士号を取得しようとしており、37歳だったノルマンは、フランスの家電メーカー、ウィジングズを辞めたばかりだった。当初、無料のモバイルアプリとして始まったGreenly(グリーンリー)は、今ではLVMHやロレアル、トリップアドバイザーなど約2000社が利用する、二酸化炭素(CO2)排出量の追跡と削減を支援するソフトウェアへと進化した。

パリを拠点とするグリーンリーは、フィデリティなどの投資家から総額7500万ドル(約117億円)を調達しており、昨年の売上高は1000万ドル(約15億円)を記録した。今年はその2倍を見込んでいるという。これらの功績から、現在28歳のデルバックは今年のフォーブスの欧州版『30 UNDER 30』に選ばれた。

「私たちは今、新しい時代の始まりにいるのです」とデルバックは語る。「脱炭素経済に向けて可能な限り早く前進するための鍵こそ、企業なのです」

グリーンリーのアプリは、企業の財務や製品、サービスに関する包括的なデータをソフトウェアで解析し、原材料の調達方法から広告がフットプリントに与える影響まで、あらゆる情報を追跡する。同社の顧客は最終的にインタラクティブなダッシュボードにアクセスすることができ、どこで、どれだけのCO2を排出しているかを把握可能になり、それらを削減するためのアドバイスが受けられる。デルバックによると、同社は社内に40人ほどの気候変動の専門家を抱えているという。

グリーンリーは、それらのサービスを企業の規模に応じた価格で提供している。欧州の小規模な企業であれば、年間3000ドル(米国の小規模企業は最低6000ドル)、大企業であれば5万ドル(約780万円)から10万ドル(約1560万円)未満で利用できるとデルバックは説明する。

CO2排出量の測定ソフト市場は4倍に

グリーンリーの投資家で、エナジー・インパクト・ヨーロッパCEOのマティアス・ディルによれば、彼の投資会社は、欧州連合(EU)のポリシーの強化を受けてこの市場への投資を積極的に検討しているという。背景には、EUの新たな規制で、大企業は早ければ今年中にも温室効果ガスの排出量を報告することが義務づけられ、従業員250人未満の企業は2026年からの報告が求められることが挙げられる。そのため、昨年およそ150億ドル(約2兆3000億円)だったCO2排出量を測定するソフトウェアの市場規模は、2030年までに4倍に伸びると予測されている。
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編集=上田裕資

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