防衛省・自衛隊はこの間、有事でも対応できる態勢づくりを進めてきた。松村氏は「昔は内局の運用局が大きな作戦方針を決め、陸海空の各幕僚監部が具体的な部隊行動を考えていました。この時代は作戦という言葉が使えず、運用と言っていたので、運用局は作戦局という意味でした」と語る。当時は、政治的なハードルの突破を重視する内局と、現場の部隊行動を第一に考える各幕僚監部がよく対立した。PKO法が成立して部隊を派遣することになった際には、派遣部隊の自衛のために「機関銃が必要だ」とする陸幕と、「小銃で十分だ」という内局との間で論争が起きた。
今では、統合幕僚長の下に内局出身の参事官が入って、作戦運用面で大臣を一元的に補佐する体制をつくることに成功した。松村氏は「せっかく、一元化がうまくいったのに、統合幕僚監部と統合作戦司令部に分かれると、昔のような意思疎通の齟齬が生まれないか心配です」と話す。
松村氏がざっと指摘しただけで、これだけの問題が浮かぶのに、国会ではほとんど論戦が見られなかった。どうしてなのか。松村氏によれば、政治家や専門家、メディアなどに軍事問題を論じる知識と経験が足りないという。「自衛隊は合憲か違憲かという入り口で議論が長い間止まっていました。ここ20年くらいは少しずつ議論も出始めましたが、軍事組織や政軍関係を議論できる人はまだまだ数が限られています。軍事に詳しい人の関心も大半が兵器に関する話で占められています」
山本五十六や山下奉文ら旧軍の将校たちは、泉下で今の状況をどのように見つめているだろうか。
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