キイトルーダの売上は2023年のメルクの売上高全体の42%を占めており、市場独占権の喪失により売上高が大幅に減少する可能性が高く、その穴は大きい。そのため、メルクは2021年にアクセレロン・ファーマを、2023年にプロメテウス・バイオサイエンシズを、そして今年にはハープーン・セラピューティクスを買収し、互いに関連性が低い収益成長の機会に目を向けている。
キイトルーダ以外では、HPVワクチンのガーダシル(Gardasil)が市場シェアを伸ばしており、売上高は2021年の57億ドル(約8913億円)から、2023年には89億ドル(約1兆4000億円)と57%増加している。キイトルーダ同様、ガーダシルも2028年には米国での市場独占権を失う。しかし、ガーダシルの売上高の減少は、キイトルーダとは対照的に、メルクにとってはそれほど深刻ではなく、痛手にはならないと予想される。
収益性分析
J&Jの営業利益率は2021年の26.6%から2023年には25.8%へと若干低下した一方、メルクの営業利益率は同期間に13.4%から4.9%へと大きく低下している。ただし、これはメルクが2023年第2四半期にプロメテウス買収にかかる100億ドル(約1兆5600億円)の費用を計上したことに起因している。過去12カ月での営業利益率を見ても、J&Jは27%で、メルクの8%よりはるかに良好である。
財務リスクを見ると、J&Jはメルクより良好で、資本に対する負債の割合は8%で、メルクの9%よりわずかに低い。さらに、総資産に占める現金の割合は14%で、メルクの7%を上回っている。
私たちの結論
J&Jは収益性が高く、財務状況も良好だ。それでも、メルクより低いバリュエーション・マルチプルで取引されている。PER(株価収益率)、およびEBITに対する株価の倍率の変動が大きいため、株価売上高倍率をベースにして分析すると、JNJの方がバリュエーションが低く、将来性も高いため、JNJの方が優れていると考えられる。現在のマルチプルを過去の平均と比較すると、JNJの方が優れていることが分かる。JNJの株価売上高倍率は現在4.2倍前後であるのに対し、過去5年間の平均は4.4倍である。対照的に、MRKは、過去5年間の平均4.5倍に対し、現在は5.5倍前後の水準だ。
全体として、JNJは魅力的なバリュエーションと医療機器事業に対する旺盛な需要を背景に、より有利な立場にあると考える。一方のMRKは、キイトルーダの市場シェア拡大が続くため、短期的には収益成長が続く可能性がある。しかし、キイトルーダが2028年に市場独占権を失うことを踏まえると、今後バリュエーションが切り下がる可能性もあるだろう。
(forbes.com原文)