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2024.05.16 11:00

【米国株ウォッチ】ジョンソン・エンド・ジョンソンの競合比較分析

メルクの収益成長は、ここ数年におけるキイトルーダ(Keytruda)の成功が牽引している。キイトルーダは非小細胞肺がん、メラノーマ(悪性黒色腫)、頭頸部がん、子宮頸がん、腎臓がんなどに効果があるとされ、その売上高は2021年の170億ドル(約2兆6000億円)から2023年の250億ドル(約3兆9000億円)へと46%も急増した。今後、キイトルーダの年間売上高は320億ドル(約5兆円)程度でピークを迎え、その後はバイオ後続品の市場参入により減少していくと考えられる。現在、サムスン・バイオエピス、アムジェン、サンドなどがキイトルーダのバイオ後続品の開発に取り組んでいる。

キイトルーダの売上は2023年のメルクの売上高全体の42%を占めており、市場独占権の喪失により売上高が大幅に減少する可能性が高く、その穴は大きい。そのため、メルクは2021年にアクセレロン・ファーマを、2023年にプロメテウス・バイオサイエンシズを、そして今年にはハープーン・セラピューティクスを買収し、互いに関連性が低い収益成長の機会に目を向けている。

キイトルーダ以外では、HPVワクチンのガーダシル(Gardasil)が市場シェアを伸ばしており、売上高は2021年の57億ドル(約8913億円)から、2023年には89億ドル(約1兆4000億円)と57%増加している。キイトルーダ同様、ガーダシルも2028年には米国での市場独占権を失う。しかし、ガーダシルの売上高の減少は、キイトルーダとは対照的に、メルクにとってはそれほど深刻ではなく、痛手にはならないと予想される。

収益性分析

J&Jの営業利益率は2021年の26.6%から2023年には25.8%へと若干低下した一方、メルクの営業利益率は同期間に13.4%から4.9%へと大きく低下している。ただし、これはメルクが2023年第2四半期にプロメテウス買収にかかる100億ドル(約1兆5600億円)の費用を計上したことに起因している。

過去12カ月での営業利益率を見ても、J&Jは27%で、メルクの8%よりはるかに良好である。

財務リスクを見ると、J&Jはメルクより良好で、資本に対する負債の割合は8%で、メルクの9%よりわずかに低い。さらに、総資産に占める現金の割合は14%で、メルクの7%を上回っている。

私たちの結論

J&Jは収益性が高く、財務状況も良好だ。それでも、メルクより低いバリュエーション・マルチプルで取引されている。

PER(株価収益率)、およびEBITに対する株価の倍率の変動が大きいため、株価売上高倍率をベースにして分析すると、JNJの方がバリュエーションが低く、将来性も高いため、JNJの方が優れていると考えられる。現在のマルチプルを過去の平均と比較すると、JNJの方が優れていることが分かる。JNJの株価売上高倍率は現在4.2倍前後であるのに対し、過去5年間の平均は4.4倍である。対照的に、MRKは、過去5年間の平均4.5倍に対し、現在は5.5倍前後の水準だ。

全体として、JNJは魅力的なバリュエーションと医療機器事業に対する旺盛な需要を背景に、より有利な立場にあると考える。一方のMRKは、キイトルーダの市場シェア拡大が続くため、短期的には収益成長が続く可能性がある。しかし、キイトルーダが2028年に市場独占権を失うことを踏まえると、今後バリュエーションが切り下がる可能性もあるだろう。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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