JNJの株価売上高倍率は4.2倍であるのに対し、MRKは5.5倍と高いバリュエーションで取引されているが、優れた収益性とより良い将来性を考慮すると、このバリュエーション差は今後数年で縮小し、JNJに有利になると考える。
以下では、今後3年間でJNJがMRKをアウトパフォームすると私たちが考える理由について述べる。本稿では、過去の収益成長率、株価パフォーマンス、バリュエーションなど、様々な要因を比較している。
株価パフォーマンス
過去3年間、MRKはJNJをアウトパフォームしている。JNJは2021年1月上旬の155ドル台から現在150ドル前後まで小幅な動きでほとんど変化がないのに対し、MRKは同期間に80ドル台から130ドル前後まで65%の力強い上昇を見せている。S&P500がこの約3年間で約40%上昇したのとは対照的である。
JNJの株価パフォーマンスは2021年に9%、2022年に3%、2023年にマイナス11%であり、対するMRKは2021年にマイナス6%、2022年に45%、2023年にマイナス2%であった。これに対し、S&P500のパフォーマンスは2021年27%、2022年マイナス19%、2023年24%であり、JNJとMRKは2021年と2023年にS&Pをアンダーパフォームしたことになる。
成長性分析
収益の成長性に関しては、J&Jよりもメルクの方が優れている。メルクは2021年から2023年にかけて23%増収したのに対し、J&Jは8%増収だった。J&Jの増収は、医薬品事業の5%増収と医療機器事業の12%の増収が牽引した。J&Jが提供する多発性骨髄腫の治療薬であるダラザレックス(Darzalex)と、自己免疫疾患の治療薬であるステラーラ(Stelara)は、ここ数年、同社の医薬品事業の成長を牽引してきた。同じく多発性骨髄腫の治療薬であるカービクティ(Carvykti)や抗うつ薬のスプラバト(Spravato)などの新薬も市場シェアを伸ばしている。
一方、J&Jにはジェネリック医薬品メーカーとの競争にさらされ、売上が減少している比較的古い医薬品もある。例えば、レミケード(Remicade)の売上は2021年から2023年の間に48%減少している。
医薬品以外では、主に2022年に買収したアビオメッドの貢献もあり、医療機器事業が好調だ。J&Jの医薬品事業は、2025年にステラーラの米国での独占販売権が失われるため、今後数年のうちに売上高の伸びが鈍化すると予想される。しかし、医療機器事業の成長により、そうした売上減は相殺されると思われる。