北米

2024.05.17 12:00

米軍が「レーザー兵器」を配備し中東でドローン破壊 イスラエルも本格導入へ

レーザー兵器のもう1つの利点は、ステルス性だ。レーザービームは通常、目に見えず無音だ。空軍の特殊作戦用攻撃機のAC-130にレーザーを搭載する取り組みの支持者たちは、敵に気づかれることなく車両のエンジンや通信機器を破壊できるという見通しを宣伝していた(しかし、この計画は長年の遅延の末、今春中止された)。

莫大な開発費用

しかし、レーザー兵器システムの製造にはコストがかかる。最初のP-HELの試作品のコストは、1基あたり800万ドル(約12億4000万円)だったと陸軍はフォーブスに語った。また、DE-M-SHORADと呼ばれる、より強力な50KWのレーザーを搭載した車両搭載システムのプロトタイプには7300万ドルが投じられたとされており、米国防総省の8250億ドル(約128兆円)の年間予算を競う防衛システムは他にも数多く存在することを考えると、これは高価な投資と言える。

さらにレーザー兵器は、砂嵐や雨、霧、煙などの影響を受けやすく、晴れた日でも、乱気流がレーザーの焦点をずらし、威力を弱めることがある。しかし、擁護派は、このような兵器はすべての条件で機能する必要はないと主張する。

2018年から2020年まで、米国防総省の指向性エネルギーの研究を行うオフィスの初代ディレクターを務めたトーマス・カーは、悪天候は敵の兵器にとってもオペレーションの障害になると指摘する。「敵のドローンも砂嵐の中ではうまく飛べないのです」

一方、軍の買収担当のブッシュは、レーザー兵器は、米軍の多層的な防空システムの一部に過ぎないと主張する。「レーザー兵器によって、迎撃ミサイルの使用を10%から20%削減できるとしたら、それは非常に良い投資と言えます」

「スター・ウォーズ」計画の挫折

指向性エネルギーのポテンシャルは、1960年代から米国防総省を魅了してきたが、レーガン政権時代の宇宙防衛構想のような過大なプロジェクトによって、数十年にわたって阻止されてきた。「スター・ウォーズ」と呼ばれて揶揄されたこの計画は、宇宙ベースのレーザーなどでソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を撃墜しようとしていたが、約300億ドルが費やされた後の1993年に中止されていた。

ICBMを爆破するためのもう1つの著名な失敗した試みの空中レーザー計画にも、50億ドルが投じられたが、2012年に打ち切られた。

しかし、それでもなお米国防総省は2020年以降に、指向性エネルギー研究に年間およそ10億ドルを費やしている。同省の指向性エネルギー担当主席ディレクターのフランク・ピーターキンは、「現状で20数基のシステムが実地試験のために軍部隊に配備され、使用可能になっている」と述べている。

その中には、ストライカー装甲兵員輸送車に搭載されたRTX社製レーザーを用いた4台のDE M-SHORADが含まれている。これらの兵器は今春、実戦テストのためにイラクに配備された。

紅海での実戦配備は遅延

また、2019年以降に海軍はODINと呼ばれる低出力レーザー「ダズラー」を8隻の駆逐艦に搭載し、敵の無人機のセンサーを破壊しようとしている。さらに、2022年に海軍はロッキード・マーティン製のHELIOSと呼ばれる60KWのレーザーを別の駆逐艦に搭載した。
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編集=上田裕資

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