欧州

2024.05.16 08:00

ロシア軍の攻撃編成に変化 徘徊型兵器より弾道ミサイルへ

ロシア軍の弾道ミサイルが直撃したウクライナ東部ハルキウの市民居住区。2024年1月2日撮影(Eugene Hertnier/Global Images Ukraine via Getty Images)

ロシア軍の弾道ミサイルが直撃したウクライナ東部ハルキウの市民居住区。2024年1月2日撮影(Eugene Hertnier/Global Images Ukraine via Getty Images)

ロシア軍は2年3カ月前の侵攻開始以降、ウクライナへのミサイル攻撃を続けている。ウクライナ側は戦略的な位置に防空システム網を築くことで対応している。これに対し、ロシア側はウクライナの防空システムを混乱させるため、巡航ミサイル、弾道ミサイル、極超音速兵器、徘徊(はいかい)型兵器などを組み合わせた包括的な攻撃法を採用した。だが最近、今夏に計画されている大規模な攻勢作戦に先立ち、ロシア軍は攻撃の内容を変更。徘徊型兵器や海上発射型の巡航ミサイルより、弾道ミサイルや空中発射型の巡航ミサイルの比重を高めるようになった。

包括的な攻撃法は、ロシア軍の多様なミサイルシステムを活用しながら、攻撃編成の変更にも柔軟に対応することができる。ロシアのミサイル備蓄には、艦船や航空機から発射できる巡航ミサイルのほか、通常地上から発射する弾道ミサイルなど、数多くの種類がある。巡航ミサイルは機動性に優れ、防空システムを回避することができる反面、弾道ミサイルに比べて速度が遅い。ロシア軍は約4年前、極超音速兵器を導入した。極超音速兵器は、弾道ミサイルの速度と巡航ミサイルの機動性といった双方の利点を兼ね備えているが、高価で数に限りがある。ロシアはこのほか、イラン製無人機「シャヘド」など、飛行高度を変えながら極めて正確な攻撃が可能な徘徊型兵器を持っている。

さまざまな種類のミサイルを組み合わせることで、ロシア軍はウクライナの防空システムを混乱させ、着弾までに察知して対応できる時間を大幅に制限しているのだ。実際、かなりの数のミサイルがウクライナの防衛網を突破しており、この戦略の有効性は実証されている。例えば今年2月7日、ウクライナ軍はロシアのミサイルの3分の2を迎撃したが、残り15発のミサイルは標的に到達した。

ロシア軍の攻撃の編成は、ここ数カ月間で大きく変化している。シャヘドをはじめとする徘徊型兵器の割合が縮小している一方、弾道ミサイル、特にロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島から発射される短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の使用が増加している。クリミア半島は標的からの距離が近いため、ウクライナの防空システムが反応できる時間が短くなり、ロシア側にとっては攻撃の効果が高まるのだ。また、最近ではロシア空軍が戦地での役割を拡大していることから、海軍発射の巡航ミサイルが、「Kh22」を含む空中発射型の巡航ミサイルに置き換えられつつある。ロシア軍のイスカンデルとKh22ミサイルによる攻撃に対し、ウクライナの防空システムはほとんど成果を上げられていない。
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翻訳・編集=安藤清香

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