ピリナに対する9日のささやかな攻撃を踏まえて、アスコラは2つの可能性を検討している。「ロシア軍が北から大規模な攻勢を仕掛けるとすれば、2つのシナリオが考えられる。ロシア側は予想よりも大きな兵力を保持しているか、それとも今まさに動員をかけようとしているかだ。どちらも可能性としてはあり得る」
だが、さらに3つ目の可能性もある。「北(東)部での作戦は、ウクライナ軍にこの方面への部隊の配置転換を強い、それによって東部でのロシア軍の主要な攻勢に対抗する予備兵力を削ぐことを意図したものである可能性もある。この可能性はかなり高い」
つまり、ロシア側による戦勝記念日の攻勢をほのめかす言動や、国境付近の小さな村に対する小規模な越境攻撃は、ウクライナ側を脅かして部隊をアウジーウカ、チャシウヤール両方面から引き離し、北へ移させるのが狙いだったのかもしれない。
言い換えれば、戦勝記念日の攻勢作戦とは戦勝記念日の陽動作戦だったのかもしれない。
ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター(CDS)もこの第3の可能性を支持している。CDSは9日の作戦状況評価で、ロシア側の目的はウクライナ側の「司令部の注意をそらし、より重要な戦域の予備部隊、とりわけ戦略予備部隊を使えないようにする」ことだと解説している。
もしそうだとすれば、ロシア側の狙いはある程度は成功していることになる。ウクライナ国防省は、ピリナ方面の防御を強化するために予備部隊を投入したことを明らかにしている。
とはいえ、アウジーウカの西方面とチャシウヤールの東方面のウクライナ側陣地を大幅に弱体化させるには、ロシア側はウクライナ軍の司令部に旅団全体規模の移動を強いる必要があるだろう。現時点でウクライナがそれを計画している兆候はない。
そして、ウクライナ側が旅団規模の配置転換をしなければ、戦勝記念日の陽動作戦は結局、BMP数両の焼失と兵士何人かの死亡、そして少数のウクライナ予備兵を移動させるだけで終わったことになるかもしれない。
(forbes.com 原文)