トリオミクスの技術は他にも応用できると同社は指摘する。プラットフォームでは品質保証から治療スケジュールなどのクリニカルパスの追跡まで、多様なユースケースに伴うさまざまな手作業を医療提供者は自動化できると宣伝している。
だが、最も注目を集めそうなのは、患者が治験や治療を利用しやすくすることに重点を置いている点だろう。トリオミクスのプラットフォームをいち早く採用したウィスコンシン医科大学がんセンターの外科腫瘍医アナイ・コタリは「複雑ながんデータを迅速かつ正確に患者のケアの改善に使用できるフォーマットに変換できることは極めて重要だ」と語る。
トリオミクスの共同創業者で最高技術責任者(CTO)のフリツラジ・シンは、2020年の創業以来の成功は、2つの異なるタイプの人材を取り込んできたことを反映したものだと言う。「中核となる重点分野への投資は計画的に行ってきた」とシン。「言語モデルを特定の領域に合うようカスタマイズするAI研究者と、数十年にわたってがんを専門としてきた臨床スタッフという、2つの複雑な部門における専門知識をうまく融合させている」
そうして同社は多くの病院やヘルスケア機関の協力を得てプラットフォームを構築してきた。同社は今、商業化の段階に入り、年内には15の医療機関と契約することを目指している。
明らかに、同社が今後躍進する上で鍵を握るのは知的財産だ。そのため、今回の資金調達は引き続き人材を採用することが主な目的だ。現在、同社は約50人の専門家を抱えているが、短中期的には60人程度まで増やすつもりだ。
今回の資金調達ラウンドには、ライトスピード、ネクサス・ベンチャー・パートナーズ、ゼネラルカタリスト、Yコンビネーターなどの投資家が参加した。出資はトリオミクスのポテンシャルに注目してのことだ。
ライトスピードのパートナー、デブ・カレーは「トリオミクスは病院の職員が既存のヘルスケアのデータセットと生成型AIを活用して臨床試験を自動化し、がんセンターの業務の流れを合理化できるよう支えている」と言う。
ネクサス・ベンチャー・パートナーズのマネージングディレクター、ジシュヌ・バタカルジーは「がんに特化した独自のLLMで確固たる初期成果が得られ、また主要ながん治療・研究センターと提携しているトリオミクスは、米国および世界のがん医療機関と患者に大きな価値を提供する態勢が整っている」と話している。
(forbes.com 原文)