テクノロジー

2024.05.01 10:30

大規模言語モデルで企業インフラを監視、今注目の新分野

木村拓哉
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たとえば、Splunkは機械学習を採用して、インシデント対応を自動化し、潜在的な問題を予測・管理することで、運用ワークフローを合理化している。同様に、Dynatraceは、AIを統合して診断能力を強化し、環境全体でリアルタイムかつ正確な分析を提供することで、問題解決のスピードと精度を向上させている。New Relicは、AIによる事前アラートとインサイトを取り入れ、チームが問題をより迅速に解決し、システムのダウンタイムを削減するのに役立てている。これらの技術を採用することで、可観測性企業は運用効率を向上させるだけでなく、現代のITインフラストラクチャの複雑さに合わせた、より動的で予防的な監視ソリューションを提供してる。

新たなプレイヤーの台頭

一方、既存プレーヤーを横目に、LLMが全く新しい可観測性プラットフォームが登場する機会を開いている。可観測性分野への革新的なアプローチを持つ新興企業が、この分野の確立されたリーダーに大きな挑戦を突きつけることが予想される。これらの新規参入者は、新鮮な視点と先進技術をもたらし、現在の市場のダイナミクスを崩し、業界内の競争と革新を促進する可能性がある。

Flip AIはそのようなスタートアップの1つだ。同社はエンタープライズシステム全体のインシデント解決を強化するために、目的別に構築されたLLMを活用して、可観測性分野の重要な課題に取り組んでいる。この革新は、システム障害の分析と診断に必要な時間と労力を大幅に削減することを目的としている。これまでは、面倒な手作業のプロセスが必要で、長時間のダウンタイムにつながり、企業には1分あたり数千ドル(数十万円)のコストがかかっていた。

同社の独自のLLMは、DevOpsタスクのために特別に訓練されており、ログ、メトリクス、トレースデータなど、幅広い運用データを解析し理解することができる。根本原因分析(RCA)プロセスを自動化することで、Flip AIのプラットフォームは数秒で結果を出すことができ、解決時間を短縮するだけでなく、ビジネス運用の完全性とパフォーマンスの維持に役立つ。データが膨大で、インシデントが複雑かつ多面的になりがちな環境では、この迅速な分析が重要となる。

Flip AIのアプローチは、侵入性を最小限に保ち、データへの読み取りアクセスだけを必要とするため、エンタープライズのデータガバナンス基準を確実に守ることができる。この手法は、外部のデータ処理リスクを警戒する企業にとって重要な、プライバシーとセキュリティの問題に対処するものだ。

様々なデータソースと可観測性ツールとインターフェースできるプラットフォームの機能は、オンプレミス、クラウド、ハイブリッド環境で運用する企業にとって、汎用性の高いソリューションとなる。Flip AIは、複数の可観測性とインフラのソースからのデータを合理化するインテリジェンス層として機能することで、IT運用チームのワークロードを簡素化し、より効率的な運用プラクティスをサポートする。

LLMによる可観測性の未来

IT環境の運用効率のためにLLMを革新的に活用することで、可観測性が大きく進歩し、企業にシステムの信頼性とパフォーマンスを向上させながら、ダウンタイムの経済的影響を低減する強力なツールを提供できる。

LLMが進化し続けるにつれて、可観測性ツールへの統合により、インフラストラクチャとワークロードの可観測性の状況が変革されつつある。パフォーマンス監視とセキュリティの即時の改善は、ほんの始まりに過ぎない。

長期的には、LLMは、AIモデルの精度、信頼性、透明性を高めることで、可観測性分野に革命をもたらすことになる。この進化にはベンダー側の継続的な適応と革新が必要になるが、AIテクノロジーの大幅な進歩を推進する可能性は明らかだ。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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