経営・戦略

2024.04.24 09:15

実名+顔写真入りのチラシで急成長。年商120億の学習塾が首都圏攻略へ

点数が上がった生徒を実名・顔出しで掲載する「個別指導学院フリーステップ」のチラシ

大学生講師のモチベーションは?

フリーステップの運営方法でもうひとつ特徴的なのが、大学生講師に極めて多くの権限を委ねている点だ。大学生たちが主体的、かつ責任をもって取り組み、成果を上げ続ける仕組みを構築している。
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まず、教室の責任者(社員)が意欲的で優秀な大学生講師を「教室リーダー」に任命し、教室の運営方針や他の講師への指導などの中心を担ってもらうようにする。さらに「教室リーダー」たちのなかから、地域ごとの教室を取りまとめる「エリアリーダー」を任命。「エリア」より大きな単位の「ブロック」のリーダーも、大学生講師のなかから任命している。そして、「教室ごと」「エリアごと」「ブロックごと」に、リーダーを中心としたオンラインの運営会議を開催し、運営の改善策や点数アップ・受験合格などの成果につながる指導内容などを話し合っている。

年に1回は、ほぼすべての講師が参加し、1年の成果や取り組みを自ら紹介、表彰する「講師フォーラム」を開催。「優秀教室」や「点数アップ」などの成果を挙げた「優秀講師」を表彰しているのだ。このフォーラムの運営も中心は大学生講師によるもので、表彰される教室や講師も大学生講師たちの投票によって決まる。

「講師フォーラム」の様子

昨年の「最優秀教室」に選ばれた堺東駅前教室(大阪府・堺市)の表彰理由を見てみると、とても大学生のアルバイトが中心となって運営しているとは思えない内容だ。
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この教室では、教室の理想として、「全員が教室のことを大好きであってほしい」を掲げた。さらに受講生の課題として、「塾では得点できているが、テストの点数につながらない」「家では勉強のやる気がでない」「部活がいそがしくて宿題ができない」を設定した。この「理想の実現」、さらに「課題解決」のために「PDCA(Plan Do Check Actionの略)サイクルの徹底」を行ったという。

具体的には「Plan:逆算型でカリキュラムを作成、講師同士で相互チェックを行う」「Do:宣言型、発問型授業の徹底」「C:デジタルLapテストのログインチェックを行う」「Action:自習カレンダーを作成させ、定期テストや模試に向けてのスケジュール管理を可能にする」といった具合だ。これらはいずれも大学生講師たちの発案で、実行するのも彼ら。並の中小企業顔負けの合理的な運営体制を、大学生講師たちが自ら構築しているのだ。

そしてさらに興味深いのは、運営に携わっている大学生講師たちのモチベーションが金銭ではないという点だろう。「リーダー」になったからといって、手当は出るものの、他業種のアルバイトのように「時給が上がる」ということがないからだ。どうして大学生講師たちは進んで負担の大きな仕事に突き進むのだろうか。

成学社で大学生講師を管轄する岡本祥運営支援部長は「今どきの大学生の仕事への感覚」を次のように語る。

「シンプルに『やりがい』を求めているのだと思います。受験生の指導は相手の人生に関わるだけに責任の重い仕事です。ですが、点数アップや志望校合格を手に入れたときには、受講生の家族から直接、感謝の言葉を受け取ることができます。『今時の若者』と揶揄されることも多い世代ですが、『仕事を通して、誰かの役に立ちたい』という想いは私たちの世代より、ずっと強いように感じますね」

ユニークな広告手法、IT・データ活用、そして大学生主体の運営方針。現在まで順調な成長を遂げている成学社だが、さらなる狙いは何か。

「当社は関西では個別指導塾の先駆けとして、そして高い合格実績で存在感を示せていると思っています。一方で首都圏での認知は昨年から本格化させたものの、まだまだこれからです。私たちの指導の仕組みを関西だけではなく、首都圏の学生にも体感してもらい、受講生の皆さんの目標を叶えたいですね」(永井社長)

文=下矢一良

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