だが市場拡大の一方で、競争は激しさを増している。東京商工リサーチの調べによると、2023年の学習塾の倒産は中小・零細規模の塾を中心に45件と、過去20年間で最多を記録した。
そんな淘汰の激しい学習塾業界にあって、「広告」「IT・データ活用」「大学生」の3本柱で東証スタンダードに上場(2008年)し、さらに事業拡大を進めている企業がある。それが成学社(大阪市・北区)だ。
関西を中心に、「個別指導学院フリーステップ」や少人数ゼミ式指導の「開成教育セミナー」など約300教室を展開。年商は120億円を超え、関西では個別指導塾の代表的なブランドとなっている。2023年に大阪府が公立大学や高校の無償化に踏み切った際には、複数の全国紙や関西のテレビ局から取材依頼が相次いだ。
そんな関西での勢いに乗じ、同年に東京本部を設置。今年は神奈川に初めて「個別指導学院フリーステップ」を開校した。まさに「首都圏攻略」を本格化させている最中なのだ。
ユニークな広告で実績を証明
成学社の中核事業は「個別指導学院フリーステップ」なのだが、その成長を支えてきた広告手法は実にユニークだ。受験シーズンが終わって春になると、どの学習塾も難関校の合格者数あるいは受講生の点数アップの実績を、声高に訴えはじめる。だが、学習塾を選ぶ側から見ると素朴な疑問が生じる。「合格者数や点数アップをうたっているが、本当かどうか確かめようがないのでは?」と。
フリーステップは、そんな「素朴な疑問」に応える広告展開で大きな効果を挙げている。チラシに、点数が実際に上がった生徒の実名と顔写真を大量に掲載しているのだ。しかもその写真には、生徒と講師が一緒に写っている。まさに、これ以上ない証明の仕方だ。
成学社の永井博社長は次のように振り返る。
「学習塾業界の一般的な広告手法とは大いに異なるので、2009年に始めた当初は社内でも反対が大半でした。ですが、成果には絶対の自信を持っていたので、実施に踏み切りました。当社の手法が好評だったことを受けて、追随する競合他社もありましたが、実名掲載の許諾を得るには生徒との信頼関係、さらに実績をあげ続けていることが前提となります。いつの間にか追随する他社は少なくなっていました」
永井は大学生のアルバイトとして手伝うようになり、そのまま卒業後に入社し、社長に就任した。まさに創業期から成学社の成長の中心を担ってきたと言える。